阪神は20日、藤原崇起オーナー(68=阪神電鉄会長)が12月1日付で球団新社長を兼任することを正式発表した。揚塩健治球団社長(60)は同日付で退任する。オーナーの球団社長兼任は球団創設85年で初めての異例人事だ。16年ぶりV奪回へ、虎の総帥がコロナ禍に揺れたチームを立て直すべく陣頭指揮を取る。

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85年の歴史を誇る老舗球団に初めて「オーナー兼任社長」が誕生した。藤原オーナーは社長を兼任するに至った経緯をこう説明した。「経済も(コロナ禍の)こういう状況の中で今、各部門ともいろいろ必死にやっている。総合的に考えて、私がやることが、今の一番いいやり方かな、というところです」。その口ぶりから、緊急事態でのリリーフ登板は明らかだった。

今季の阪神はコロナ禍に揺れた。開幕前の3月下旬に藤浪晋太郎投手(26)ら3選手がコロナウイルスに感染。その前に他の4選手を含む不特定多数で会食していたことが問題視された。9月19日にも糸原健斗内野手(28)らが遠征先で球団が定めたルールの上限を超える人数で会食、複数グループの計5選手が陽性となり、他にチームスタッフ4人の感染も確認された。目指す逆転Vへスパートをかける時期に、10選手が出場選手登録を外れる事態となった。そして10月9日、揚塩球団社長が「2度にわたって、球界全体にご迷惑をかけた事実は否めません」と引責辞任を発表した。

球団は後任の調整を進めてきたが緊急事態的な側面を考慮。風紀引き締めの意味も込め、「オーナー兼社長」が最善策の結論に至った。藤原オーナーは「まずは現場に行きます。現場の実態が分からないと判断できない。一生懸命話を聞いて、肌で感じて考えていきたい」と引き締めた。現場により近い立場で球団運営に携わることで、課題が把握しやすくなる。コロナの影響は来季も不透明なだけに、有事の際には矢野監督との間で、迅速に意思決定できる狙いもありそうだ。

もちろん最大の目標は16年ぶりのV奪回だ。「今年も2位。チャンピオンフラッグには届いてない。今度は現場へ行きますので、もっと具体的なところに入っていく。そういう意味では、ずいぶん緊張感があります」。来季は矢野監督が3年契約最終年の勝負の年。今季の苦い教訓を刻み、異例のオーナー兼任社長が陣頭指揮を取る。【桝井聡】