故沢村栄治氏の功績をたたえ、シーズンで最も優れた先発完投型投手に贈られる「沢村賞」の選考委員会が23日に都内ホテルで開かれ、中日の大野雄大投手(32)が初受賞した。

   ◇   ◇   ◇

-おめでとうございます

ありがとうございます。電話をいただいたときはすごくうれしかった。すぐ隣に妻がいたので、取れたよ、と。良かったねと、一緒にすごく喜んでくれていました。

-沢村賞とは

僕を含めて先発投手は、沢村賞はどこか頭の中にあるが、遠いものすぎて、実際目指すとはならない。シーズン前に目標の1つとして沢村賞を狙いたいです、とかそういうところに届かないような遠い賞でした。そのような賞をいただけるとは、プロ入る前も、入ってからも、程遠いと思っていた。まさか、という感覚です。

-巨人菅野との一騎打ちと言われていた。どこを評価されたと思うか

今年に関しては、最後まで1人で投げきった数が、菅野投手との差が少しだけあったのかなと。やっぱり完投数。1人で投げきった数を評価いただいたと思う。自分の長所は長いイニングを投げられること。昔から思っていた。最終的に10完投。よく10回も投げられたと思う。

-今季、他も含め最も誇れるものは

「防御率だと思う。昨年に続いて2年連続で受賞できたタイトル。昨年取ったときに、2年続けて防御率のタイトルを取りたいと言っていた。今年に関しては激戦で、森下投手も菅野投手も1点台だった。その中で1番になれたのは誇れることと思う。

-要因は

チームの野手のみんながよく守ってくれた。点数が、失点が減って取れたもの。毎回、完投したあとに、そう言っていたのは本音。そのおかげだと思います。

-過去最高の成績を残したが、変わった点は

そんなにない。皆からはお前が投げていると、打たれる気がしない。点を取られる気がしないと言われるが、自分自身はそんなことはなかった。毎回、マウンドに上がるのは怖い。初回に7失点くらいしたらどうしようと。そういう怖さを持ってマウンドに上がっているのは事実。その試合に対する準備は毎回、怠らずにやってきた。

-来季の目標は

「まずは優勝です。チームの優勝を第一に置いて腕を振りまくりたい。ケガはいけないけど、多少のリスクは背負いながら、1年間しっかりと投げたい。

-今日だけはほめて欲しいか

「そうですね。自分の中でも、こういう賞をいただいて身が引き締まる。普段の行動からしっかりしていかないといけないと思う。見られていることを感じながら、生きていきたい」

-菅野とのダブル受賞も検討されたようだが

菅野投手も開幕から連続勝利記録や他の数字も素晴らしいものを残していた。僕が1人で取れるのは、想像できない部分もあった。もし、(受賞が)菅野投手でも、おかしくなかったと。納得できていたと思う。その中で僕を、1人に絞っていただいたのは、素晴らしいことと自分で思う。選んでいただいた選考委員の方々にありがとうございますと、伝えたい」

-常に謙虚だが

プロ野球の世界は怖い。世の中も、社会も。いいときは長く続かない。そういうときに偉くなっちゃうと…みたいになる。自分だけの力じゃないと思っていることが自分の中でそうさせているのかな。と思う。自分だけの力で抑えたんじゃなく、みんなが守ってくれて、打ってくれての成績だと思う。そういうことは忘れてはいけないと心の中で思っている。これからもそれは持ち続けていくと思う。謙虚にやっていきたい。母親がそういう感じで育ててくれた。

-これから変化する点は

今までとは違う姿を見せていかないとアカンな、というのはある。責任感が生まれるというか、今までと一緒で、俺はローテのただの1枚や、という感覚ではいけない。このようにいろんな賞をいただいて、監督もエース、エースといろんな場面で言ってくださっている。それに恥じない、そう言っていただいているのに、自分がそういう意識にならないと申し訳ないというか、変わっていくのが大事。無責任な行動もできないし。普段の練習の姿もいろんな人が見ている。自分がチームの代表と思っていくことが、これからの成長につながる。自分が目指していた吉見さんはそういう方だった。そういう風になっていかないといけないな、と思っています。