野村さん、頑張ってます-。野村克也氏が昨年2月11日に84歳で亡くなってから1年。春季キャンプでは、正捕手候補から若手まで、12球団の扇の要たちが、それぞれの課題を胸に鍛錬に励んでいる。

   ◇    ◇   ◇

<ヤクルト>

ノムラの教えを継承する古田臨時コーチが、捕手陣の底上げに尽力している。沖縄・浦添キャンプの第2、第3クールで指導。捕手を集めた円陣では「俺たちで勝つぞ!」と鼓舞。防御率2年連続12球団最下位の現状に「お前たちが上がればこのチームは上がるんだ。見返そうぜ」と前向きな言葉を掛ける。

中村、西田、松本直、古賀に直々にノックを打ち、配球についてのミーティングは投手陣と考え方を共有した。捕手はチームを勝たせることができるポジション。大切なのはコミュニケーションとリクエストだ。

現役時代、野村監督からムチャぶりとも取れる要求をされた。「例えば高津は真っすぐとシンカーとカーブしか投げなかったけど、シンカーを内と外、球速も3種類用意しろと言われた。簡単に言うなよと思ったけど、1年後、高津はできてた。ちょっと無理ってことも、やってみればできることもある」。もう少し曲がってほしい、こんな球種がほしい-。率直に伝えることが、互いの成長を生む。【鎌田良美】

<巨人>

育成2位の喜多隆介捕手(22=京都先端科学大)が2軍宮崎キャンプで奮闘している。育成新人で唯一のアベンジャーズ隊員。休養日前の9日の日課になっているロングティー打撃で阿部2軍監督から直接、熱血指導を受けて下半身を強化した。「1日1日を無駄にしないように、とにかく必死にやるだけです」と、苦悶(くもん)の表情で歯を食いしばりながら食らいている。今季の新人は19人で、うち捕手は喜多の他にドラフト7位萩原哲(22=創価大)育成5位前田研輝(22=駒大)同6位坂本勇人(18=唐津商)で、計4人。同期入団だけでも激しい争いが待ち受ける。

<阪神>

ドラフト4位の栄枝裕貴捕手(22=立命大)が強肩を生かし1軍枠争いに参戦中だ。9日の日本ハム戦でも平沼が試みた二盗を刺す「枝キャノン」を発動。経験豊富な梅野、坂本らに追いつけと、連日ブルペンで主力投手の球を受け、指導を受ける。「青柳さん、秋山さんからは投げる投手によってどういう構えがいいか、人によって違うと言ってもらいました。アマチュア時代と違って1球が命取りになる。意思疎通が大事」。各投手の球筋、好む構えなどを覚え込む毎日で鍛錬を重ねる。

<中日>

谷繁元監督以来の正捕手争いが熾烈(しれつ)だ。最有力は昨季88試合出場して大野雄と最優秀バッテリー賞に輝いた木下拓で、7日のシート打撃で又吉から「先頭打者本塁打」を放ち、昨季6本塁打のパワーを示した。2年目郡司も同様に本塁打を放ち、9日の紅白戦でも適時打をマーク。1軍の桂、加藤匠、2軍では3年目石橋も頭角現している。

<DeNA>

22歳の山本が「超強肩」を武器にアピールを続ける。昨季イースタン・リーグでは驚異の盗塁阻止率6割1分9厘をマーク。2年連続でキャンプ1軍スタートとなった。三浦監督の期待も大きく、7日の紅白戦でも主力組の8番で先発した。昨季最多スタメンマスクの戸柱、攻守に安定したベテラン伊藤光、沖縄出身で打力のある嶺井らも奮闘中で、激しい正捕手争いを繰り広げている。

<広島>

2年目石原が開幕1軍へ猛アピールを続けている。持ち味の強肩に加え8日のシート打撃ではチーム“1号”となる中越え弾。正捕手会沢に次ぐ2番手に期待された坂倉が第1クールで故障離脱し、石原の存在感は高まっている。「まずは1軍キャンプを完走して、オープン戦で結果を残して開幕1軍につなげられたら。シーズン序盤から1軍で結果を残せるように頑張りたい」とやる気十分だ。