阪神ドラフト4位の栄枝裕貴捕手(22=立命大)が、対外試合デビュー戦で3度の「枝キャノン」を発動した。「肩には自信があったんで。そこしか本当に今、見せるところないんで。3つに別にびっくりしているわけでは」と浮かれることはなかった。

二塁送球1秒8を誇る速くて正確な送球が武器だ。2回には1イニングで2人も刺した。1死一塁から9番宮本の2球目に一塁走者森が二盗を仕掛けたがノーバウンド送球でタッチアウト。2死一塁では一塁走者宮本が二盗を試みたが、今度はワンバウンドで走者が滑り込んで来るところへピンポイントで投げた。

先発青柳のクイックモーションが速かったこともあるが、矢野監督は「青柳のクイックで刺すのは普通。でも普通にできるってことはたいしたもの。俺、自分の1年目、全然できへんやったから」と、自身のルーキー時代と比較しながらほめた。4回には加治屋と組んで倉本が仕掛けた二盗を刺した。5回に宮本に許した盗塁はワンバウンド投球を前にはじき送球できなかったもの。勝負できるものはすべて刺した。

栄枝は「大学4年間もテレビをまったく見てなかったんで」と振り返るほど立命大時代に野球に打ち込んだ。捕手出身の後藤昇監督(60)から、スローイングを徹底的に鍛えられた成果でもある。入学時から強肩にほれ込んでいた同監督は「捕って、より素早く投げるように、ミットだけではなく体を前に持っていく」と、体重移動をうまく使えるフットワークを染み込ませた。

もちろん肩だけでは梅野、坂本らライバル捕手に勝てないことは分かっている。栄枝は「キャッチング、ブロッキング、打撃とすべてそろって捕手は信頼されると思う」とこれからも勉強の日々が続く。佐藤輝の活躍で目立たないが、もうひとりの大卒ルーキーも、ただものではない。【石橋隆雄】