あの夏の青空に誓ったように、東北のために戦う。山形出身の楽天下妻貴寛捕手(27)が東日本大震災からちょうど10年の11日、ロッテ戦で攻守に躍動した。5回に俊足高部の二盗を阻止すると、その裏に右翼越え適時二塁打を放つなど2打数2安打1打点。「同じ東北人として皆さんに元気、勇気を与えられるように、東北人という誇りを持って頑張りたい」とプレーに思いを込めた。

11年3月11日、午後2時46分。大きな揺れを、部活動中に感じた。練習は中止となり帰宅。信号は止まり、停電は翌日まで続いた。「両親と一緒にガソリンスタンド、タンクローリーを探しにいきました」。2カ月後の5月。「復興試合」と称される練習試合のため、バスで隣県宮城に向かった。車窓からの光景は鮮明に記憶する。「高速道路の東側は田んぼの真ん中に家があったり車がひっくり返っていたり、家に車が刺さっていた。衝撃を受けたことは今も忘れないです」。

1年後。酒田南の主将として夏の甲子園の選手宣誓を引き当てた。被害の大小は違えど、東北の一員。チームメートと考えた文章に被災地への思いを込めた。監督、コーチの助言も重ね、青空の下で声を張った。「山形からの応援メッセージじゃないですけど、チームみんなもあの文章にはうなずいて、僕が代表して大舞台でしっかりと伝えられた。自分にできることが目いっぱいできました」と、かけがえのない経験をかみしめる。

縁あって仙台に本拠地を置く楽天へ12年ドラフト4位で入団。1年目の13年は1軍が出場なく、日本一に輝くチームの裏で悔しさも抱いた。「あの瞬間を見たファンの皆さんの笑顔、涙は今でも忘れられない風景。今年こそチームの一員としてしっかりと活躍してあの輪に入っていきたい」。入道雲のようにたくましく、浜風のように爽やかに。ひたむきな全力プレーこそが、被災地を勇気づける、何よりのエールだ。【桑原幹久】

▽楽天石井GM兼監督(下妻に) すごく良い仕事をしてくれた。ポンと(試合に)出たりするので、試合勘は非常に難しい。とにかくうまく試合に入ってくれると助かります。

▽楽天滝中(開幕ローテ6枚目入りを目指し、先発で5回3失点) 先発として計算できるように、6回3失点を基本に、最低ラインを崩さないようにしていきたい。

▽楽天鈴木翔(今季1軍初登板で1回を3者連続三振で無失点) 正直、ほっとしています。スライダーをしっかり思ったところに投げ切れました。