ロッテには熱く継承されるものがある。10年前の「3・11」に戦った楽天と、ちょうど10年後も対戦。2試合ともマウンドに上がったプロ14年目の唐川侑己投手(31)が証言した。

「投げた後に衝撃的なニュースが入ってきて。鮮明に覚えています」と振り返る。兵庫・明石で行われた10年前は先発し、6回1失点だった。8回表で試合は打ち切り。帰りのバスで映像が流れ、チームはざわめき、やがて絶句に変わった。

ちょうど10年後はセットアッパーとして、魔球カットボールを食い込ませた。「ポジションも違いますし、年もあるのかも分からないですけど、チーム全体が見えるようになりました」と言う。ずっとロッテにいるからこそ。「ぼくが入った時からのロッテカラーとして、みんなが1つ束になってまとまった時は、すごい力を発揮する。それは変わらないのかなと思います」と言い切った。

あの日から10年後は、育成左腕の本前郁也投手(23)が先発した。支配下登録を目指し「とにかくアピールし続ける、という思いしかないです」と奮闘。楽天を3回1安打無失点に抑え、大きくアピールした。入団2年目の今春キャンプで1軍に抜てきされた。

北海道出身で10年前は日本ハムファン。一体感が好きだった。ロッテに入って印象は変わった。「今こうやって2軍も1軍も経験して。去年2位の悔しい思いもあって、一体感が強いなって感じました」とうれしそうに話した。

本前の好投を、左翼を守る荻野貴司外野手(35)が盛り立てた。初回の1番小深田、2回2死一塁での7番小郷。いずれも低く難しいライナーで、後逸したら長打必至。2つともしっかりキャッチした。「キャンプからずっとレフトの練習をしてたので。勝利に向けて全員でやるのは、変わらずやっていきたいです」。プロ2年目の10年前は2番遊撃で出場していた。

荻野と二遊間を組んだのは、10年後の井口資仁監督(46)だ。震災直後のネット裏のざわめきを覚えているという。「あれから10年もたつんだなと。イーグルスもですけれど、我々もいい意味でパワーを届けられたらなと思いながらやっています」。回想しながら、おのおのがチームの輪の強さを言葉に。優勝への思いを強くする10年後の3・11だった。【金子真仁】