超レアな一振りで、メモリアルな1勝を届けた。楽天辰己涼介外野手(24)が史上5人目、パ・リーグでは同3人目の「開幕戦初球先頭打者弾」となる今季12球団1号を放った。3年前のドラフト会議で4球団競合の末に自身の外れ1位の当たりくじをつかんだ、石井一久GM兼監督(47)の監督初勝利に貢献。田中将大投手(32)が、ふくらはぎの張りで離脱が決まった試合前の重い空気も鮮やかに振り払った。

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これ以上ない、先制パンチで幕を開けた。1回裏。1番辰己が上沢の初球をたたいた。「タイミングが合えば初球からいこうと思っていました」。打球は風にも乗り、左翼席前段へ。「競合した時に監督に引き当ててもらった。何とか一試合でも多く勝利に貢献して恩返しできるようにしたい」と目元を緩めるマスク姿の指揮官と左腕でエアタッチ。07年高橋由伸(巨人)以来史上5人目、パ・リーグでは70年山崎裕之(ロッテ)以来3人目の「開幕戦初球先頭打者弾」で試合の主導権を握った。

18年10月25日。当時の石井GMが、初参加のドラフト会議で辰己のプロ野球人生の幕を開けた。外れ1位で楽天、ソフトバンク、巨人、阪神の4球団競合。先頭で半透明の箱をあさり、当たりくじをつかみとった。1、2年目ともに100試合以上に起用。だが定位置確保に至らなかった。

叱咤(しった)激励で期待を表す。「野球に真摯(しんし)に取り組むところが上達する条件ではあるけれど、停滞させる原因にもなる。少し道から外れた感覚を持つことも成長の要素」。今春キャンプも辰己の考えを尊重。自主トレで学んだ打撃理論を固めるためにキャンプ序盤に大振りを試みる姿に、大きく手を加えなかった。全体練習後の居残り打撃練習も最後まで見つめ、午後5時すぎから球拾いも手伝った。無限の可能性を秘める種を芽吹かせようと、適度な水を与え続けた。

花を開かせつつある3年目の1発からチームは勢いづき、初々しく記念球をフラッシュへ向けた。「四十何歳になってやるとは思っていなかった。辰己らしい思い切りがあって、チームに勢いを持ってくる素晴らしい一打。また新たに、このチームでしっかりシーズンの1歩を踏み出したと思います」。酸いも甘いも交じり合う、サクセスストーリーが動きだした。【桑原幹久】

▼辰己が先頭打者で初球本塁打。開幕戦の初回先頭打者本塁打は11年マートン(阪神)以来19度目で、楽天では初めて。初球を打って記録したのは07年高橋由(巨人)以来5度目で、パ・リーグでは70年山崎(ロッテ)以来51年ぶりとなった。この試合は辰己の1発がVアーチ。開幕戦で先頭打者本塁打がV打となったのは00年秋山(ダイエー)以来。「先頭打者初球Vアーチ」は前述の山崎に次いで2度目。

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▽楽天石井GM兼監督(監督として初勝利し) 僕の1勝目なので、カメラに向かってボールを持ってガッツポーズかよく分からないですけど、四十何歳になってやるとは思っていなかった。もうないのかなという気がしています。

▽楽天小深田(2年目で自身初となる開幕スタメンで3安打1打点) 辰己が先頭でホームランを打ってくれたので、だいぶ気持ちが楽になりました。

▽楽天小郷(自身初の開幕スタメンで5回に左前適時打) 飛んだところも良く、ラッキーヒットだったんですけど、自分にとっては大きな1本。オ・ゴー。