広島の新助っ人ケビン・クロン内野手(28)が、開幕5戦目で待望の来日1号を放った。同点の6回1死から阪神2番手加治屋の142キロ直球を左中間コンコースに運び、勝ち越し弾に。来日17打席目のアーチは決勝弾となった。1打席目の左前打を含め来日初のマルチ安打と優良助っ人が本領を発揮し始め、チームは今季初のカード勝ち越しで単独首位に立った。

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ホームランバッターならではの、大きな放物線だった。同点の6回。クロンは加治屋のやや浮いた直球を逃さず、完璧に捉えた。滞空時間の長い飛球は、左中間コンコースで弾んだ。行方を見つめた大砲は着弾を確認することなく、一塁へ歩を進めた。手応えはなかった。それだけ完璧な当たりだった。「打者としては最高の当たりだった」。“新外国人選手1号”に本拠地のボルテージは一気に上がり、緊迫した試合の流れを大きく変えた。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で新外国人選手が来日できない中、クロンは1月3日に来日した。契約後に球団が提示した来日スケジュールで、最速の日程を選択。隔離期間を経て、合同自主トレから参加。春季キャンプもほぼフルメニューを消化し、対外試合は全試合に出場した。日本になじもうとする姿勢は、シーズンが始まっても変わらない。居残り特打や休日返上もいとわず、この日は早出特打に参加。練習前にはチームメートだけではなく、グラウンドキーパーともグータッチをかわす。

来日後の隔離期間に数冊の書籍を読破した読書家が、毎シーズン前に読む本がある。ティモシー・ガルウェイ著の「インナー・ゲーム」。メンタル強化メソッドのベストセラーで、米国時代から続ける意識付けでもある。だからこそ、外的要因に左右されない。

試合前まで打率を1割6分7厘まで落とし、打順も開幕戦の6番から7番に下がった。「野球においてもうまくいくことばかりではない。とにかく明るく自分のやっていることを信じて前向きにやっていれば、いい結果は必ず付いてくると信じてやっている」。打撃コーチの指導に耳を傾け、成長にすべてを注ぐ。「自分がここにいるのはチームの勝ちに貢献するため。これからもどんどんどんどん勝ちに貢献できるようにホームランも打っていきたい」。日本式を取り入れながら成長する大砲が、本領を発揮し始めた。【前原淳】

◆ケビン・クロン 1993年2月17日、米カリフォルニア州生まれ。父が元メジャー選手、兄は現役メジャーという家庭に育った。14年ドラフト14巡目でダイヤモンドバックスと契約。19年には3Aで82試合に出場し、38本塁打、105打点、打率3割3分1厘。同年メジャー初出場。メジャー通算47試合、15安打、6本塁打、16打点、打率1割7分。今季推定年俸は8800万円。195センチ、115キロ。右投げ右打ち。

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