「寸止めZポーズ」からも喜びがにじみ出た。阪神糸井嘉男外野手(39)が今季初スタメンで自身14年連続アーチを決めた。

2点を追う6回2死。左腕エスコバーの初球、外角153キロを強くミート。「しっかり振り抜くことができました」。今季17打席目での1号ソロをバックスクリーン左の観客席まで届かせた。

1発を放った直後の三塁ベンチ前ではナインにも促され、カメラ目線で手を動かしかけた。ドラフト1位佐藤輝のホームランパフォーマンスでもある「ももいろクローバーZ」の「Zポーズ」を披露するかと誰もが期待した瞬間、動きを止めてニヤリ。まさかのパフォーマンスなしで仲間、虎党を盛り上げた。

昨季は右膝痛に苦しみ、86試合出場で打率2割6分8厘、2本塁打に終わった。歩行するだけで激痛が走る毎日。水を抜いても翌日にはたまる状態が1年間続いた。「年齢的な部分もありますし、いろいろ考えることもあった」。それでも40歳シーズンの挑戦を選んだ。勝つために、優勝するために、数少ないチャンスでひと振りに懸けてきた。

近大の後輩でライバルでもある佐藤輝が4番を任されるほどの活躍を続ける中、出番が限られる日々が続いても心は折れない。黄金ルーキーの1発1発に誰よりも破顔。ようやくスタメンの出番が訪れるとあっさり結果を出すから、さすがだ。

試合後、矢野監督から「今後も嘉男には行ってもらわないとダメなところがある」と信頼を寄せられた39歳。「いつどういう状況でも、僕らは自分にできる最高の準備をするだけ。また明日からチームが勝てるように、しっかりやっていきます」。やはり「超人」は頼りになる。【佐井陽介】