トンネルを抜けた。広島宇草孔基外野手(24)が「日本生命セ・パ交流戦」の西武戦の8回に決勝2号2ランを放ち、チームの連敗を8で止めた。

激しい外野手争いの中でチャンスを得た若手が、2試合ぶりの先発出場で大きな仕事をやってのけた。この1勝で、セ・リーグの09年以来2度目となる交流戦勝ち越しも決まった。

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アドレナリンがあふれ出した。同点の8回2死一塁から、宇草は追い込まれながら高め真っすぐを上からバットをかぶせるようにたたいた。左翼方向へ上がった打球はそのままスタンドイン。勝ち越しの2号2ランに、チームメートもベンチを飛び出し喜びを爆発させた。重い空気を振り払う1発が、8連敗に終止符を打った。

「何でできないんだと不安もありますけど、グラウンドに出ているときはなにくそと思ってやろうと思っている。そういう悔しい気持ちがあるから前向きにプレーできるんだと思います」

西川に代わる2試合ぶりの先発出場。とにかく、必死だった。4回は無死一、三塁から二ゴロで打点をマークした。二直、投直に倒れた1、3打席目も捉えた打球だった。

激しい外野手争いの中にいる。主軸の鈴木誠に西川、若い羽月や野間らが3つのポジションを争う。1年目の昨季も外野の一角を任された。だが、10月に右かかと付近に死球を受けた。ベンチ裏で治療を受けながら、グラウンドに戻ることしか頭になかった。「盗塁することしか頭になかった。痛みは感じなかった。アドレナリンってすごいですね」。ただ、動いた瞬間、激痛が走った。右腓骨(ひこつ)骨折だった。

ケガからはい上がり、外野手争いに加わる。「(ケガによる出遅れは)悔しくてもどかしかった。けがした時から“進化して戻ってやろう”と強い気持ちでやっていた。進化できているかは分からないですけど、そういう気持ちを常に持ちながらやってました」。成功と失敗を繰り返しながら成長する。試合前には打撃フォームを修正。上げた右足をひねらずに、そのまま踏み込むようにしたことで好結果につなげた。

2日の日本ハム戦以来の白星。セ・リーグの09年以来2度目となる交流戦勝ち越しも決めた。佐々岡監督は「長かったね。1つ勝つのがこんなに難しく、苦しいものとは。選手たちが頑張ってくれました」と一体感でつかんだ勝利をかみしめた。【前原淳】

◆宇草孔基(うぐさ・こうき)1997年(平9)4月17日生まれ、東京都出身。常総学院3年春の甲子園では、1回戦米子北戦で5盗塁を記録。法大4年時には、大学日本代表にも選ばれた。19年ドラフト2位で広島入団。185センチ、79キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸は1100万円。

▽広島大瀬良(7回3失点で勝ち星つかず) 簡単にスイスイいけるとは思っていませんでしたが、何とか粘り強くとは思っていた。勝ってくれて、何とか報われました

▽広島栗林(前回登板で連続無失点ストップも3者連続三振で12セーブ目) 前回は自分のミスでチームが負けてしまったので、今日は必ず勝とうと。8回に宇草がホームラン打ってチームがいい流れだったので、絶対に抑えるぞという気持ちで行けたのがいい結果につながった