広島がヤクルト10回戦で反撃態勢もつくれないまま敗れ、4連敗を喫した。6月中の借金15は、72年6月21日阪神戦(甲子園)以来49年ぶり。さらに、早ければ27日にも自力優勝の可能性が消滅する。15年から広島を担当し、セ・リーグ3連覇時も取材した担当記者・前原が、半世紀ぶりの屈辱を味わったチームの現状をリポートする。

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開幕から59通り目の打線も、浮上するきっかけは見えなかった。得点は併殺崩れの間の1点のみ。試合終了後、しばらくベンチから立ち上がれない選手も多くいた。昨年まで5年連続勝ち越し中のヤクルトに7連敗。シーズンは前半戦とはいえ、折り返しは見えている。借金は15に膨らんだ。五輪を前に消化試合とするには早すぎる。佐々岡監督は「今、負けが込んでいる。申し訳ない。前を向いて元気を出して3連戦を戦っていきたい」と何とか前向きな言葉を絞り出した。

苦しんでいる要因の1つにコロナ禍の影響はあるだろう。まだ影響が完全に拭えているとはいえない。

また、正捕手会沢の離脱も大きく響いている。他球団スコアラーも「会沢がいるといないとでは全然違う」と認める。ただ、65試合目で打順59通りはあまりに多い。同じ打順の並びは<1>菊池涼<2>羽月<3>鈴木誠<4>西川<5>坂倉<6>安部<7>クロン<8>小園が最多で3試合という数字が不安定な戦いを表している。日替わり打線はもろ刃の剣。選手の特長を見極めて機能してこそ意味を持つが、機能しなければ選手個々の役割も曖昧となる。リーグトップのチーム打率で、総得点はリーグ5位。広島の攻撃はまだ“線”になっていない。

チーム状況が若手育成にも影響を及ぼしている。2試合続けて4番で起用された林は5番以降の打順では15試合で4割9分2厘も、3、4番では7試合で29打数3安打で打率1割3厘。鈴木誠が「神ってる」と言われた16年は1番で起用された最終戦を除き、打順はすべて5番以降だった。そこで経験を積み、翌17年に4番に定着した。チーム状況が20歳に重圧を背負わせている。林が4番を務めた2試合には、主砲がいない。懸命な思いが、6回のヘッドスライディングとなったように感じられた。

最終戦に敗れてBクラスに終わった15年も、開幕20試合まで19通りの打順で臨んだ。戦いながら形を探り、選手個々の役割は明確となった。加えて、最後まで緊張感のある戦いを続けられたからこそ、翌年の歓喜につながったように感じる。今季はシーズン最後まで緊張感の中、戦えるだろうか。河田ヘッドコーチは「(打順を)固定するというよりも、打順を勝ち取ってほしい」と選手の奮起に期待する。誰もが現状を抜け出したいと必死。選手たちは早出から居残りまで、勝利のために汗を流している。その姿に希望を見いだしたい。【前原淳】

 

○…高橋昂が6回3失点の粘投も、打線の援護なく3敗目を喫した。2回に先制を許し、3回は2死一塁から村上に左越えの2ランを被弾。4回以降は毎回走者を背負いながらも、無失点に切り抜けた。「入りが探り探りになってしまったところが反省点。粘り強くいけたのは大きな収穫。終盤良かった点では、次につながる投球ができた」と前を向いた。

 

▽広島鈴木誠(3試合ぶりに実戦復帰し)「問題ないことはないです。普通じゃないことが起きているので。それはもうしょうがないのかなと思います」

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