西武は7日、松坂大輔投手(40)が今季限りで現役引退することを発表した。

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「相手側」から見た松坂大輔のデビュー戦は鮮烈だった。99年4月7日の東京ドーム、西武に入団した松坂のプロ初登板の相手は日本ハムだった。当時日本ハム担当記者だった私は、対戦打者の衝撃を肌で感じた。1回裏、伝説となった3番片岡篤史の“尻もち”するかのような空振り三振を目の当たりにした。高めの155キロの剛球だった。

試合後、松坂と対戦した全選手のコメントを取った。怪物ルーキーにものの見事に抑えられ、1勝を献上しただけに、選手の口は重かった。

その中で片岡の口調は清々しかった。おとこ気にあふれていた。「ビックリした。久しぶりにゾクゾクする投手や。18歳はうそみたい。自分に対して全力の真っ向勝負がうれしかった。さすが平成の怪物や。今後対決するのが楽しみ」と真摯(しんし)に答えてくれた。悔しい中にも、今後プロ野球を背負うだろう投手の出現を喜んでいるかのようだった。

東京ドームが、怪物ルーキーの熱気に包まれた。そして8回、最強の2番打者として売り出し中だった小笠原道大が松坂からバックスクリーンに本塁打を放った。その後の小笠原の活躍もめざましく、球界を代表する大打者となった。4番田中幸雄もヒットを放っていた。役者がそろった平成の怪物のデビュー戦。まばゆい夜が、懐かしい。【1999年日本ハム担当・栗原弘明】