万能侍が球宴初スタメンで右に左に走り回った。全パのソフトバンク栗原陵矢捕手(25)はオールスター史上初めて1試合4ポジションを守った。「初めてはうれしいですね。なんでも。すごくいい経験ができました」と汗を拭い、充実感あふれる表情で振り返った。

「8番一塁」で先発し、4回は今季から挑戦する三塁に就いた。7回は侍ジャパンでも登録されている外野手として左翼へ。8回は本来の守備位置である捕手、9回には再び最初の一塁に戻ってフルイニングをしっかり守り抜いた。仕掛け人の工藤監督は「栗原という選手はいろんなポジションを守れるとアピールしたかった。よく頑張ってくれた」と褒めた。

試合前にはさらに「投手」にもなっていた。ホームランダービーで同郷福井出身のオリックス吉田正の相棒として優勝をアシスト。死球を当てるハプニングもあったが「ボール気味に投げても本塁打にしていただいて、助けていただきました」。自身は打席では3打数無安打と結果を残せなかったが、“五刀流”で存分に持ち味を発揮した。

複数守備をこなすユーティリティー性を期待され、東京五輪の日本代表に選ばれた。「(グラブは)4種類持っていきます。普段からロッカーに置いてます」と準備は万端整っている。「気持ちを引き締めて、日本のために頑張りたい」。初の舞台を満喫し、金メダルを懸けた戦いに向かう。【山本大地】

▼栗原が一塁、三塁、左翼、捕手と4つの守備位置に就いた。球宴で1試合で4つのポジション(外野は左翼、中堅、右翼に区別せず)を守った選手は史上初めてで、同一年でも4ポジションを守った選手はいなかった。

過去は1試合3ポジションが最多で、63年<2>戦の中西(西鉄=三、二、一)と81年<3>戦、87年<3>戦の2度あった原(巨人=ともに遊、二、三)の2人が記録している。