岡田阪神が、歴史的な大逆転で優勝を逃した。巨人に最大13ゲーム差をつけ、7月には優勝マジックを点灯させた快進撃から終盤は巨人の猛追にかわされてしまった。まだクライマックスシリーズでやり返すチャンスはあるが、敗因はどこにあるのか。緊急連載で検証する。

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今季初めて首位から陥落した翌日の10月9日。南球団社長は横浜には帯同せず、帰阪した。優勝の美酒を味わうはずの首都圏遠征だったが、よもやの大逆転を巨人に許した。疲れ切った表情の道中。岡田阪神はなぜここまで失速したのか―問いかけに対し、答えは明確だった。

「打てんなあ。それが大きな問題。やっぱり長打力が必要だということを痛感した」。

打てん―、それは岡田監督の最近の口癖でもあった。湿ったバットが歴史的なV逸を生んだ、と球団トップは認識している。

シーズンを振り返ると、最初から貧打にあえいだわけではない。7月10日の巨人戦で、リーグ2位タイとなる10試合連続2けた安打を記録。この時点でチーム打率は2割8分3厘。ダントツのトップだった。しかし次第に、打線は息切れしていく。主軸の新井が五輪や故障で離脱したこともあるが、理由は他にもある。それは「トロイカ体制」が機能しなかった点だ。今季から広沢打撃コーチが1人だけ専任で、吉竹コーチが兼任、岡田監督がサポートする形で打撃部門はスタートした。しかしキメの細かい指導は見られなかった。

9日に行われた横浜スタジアムの指名練習。野手も参加し、にぎわった。しかし球団関係者から、こんな言葉が聞かれた。「今頃になって、やっても…」。今季は試合のない日に、野手が指名練習に臨むのは数えるほど。昨年までは東京遠征でも神宮球場の室内練習場を借りて、午前中に打ち込む姿があったが、その光景はなくなってしまった。甲子園で早出特打する選手はいたが、選手の自主性に任せてのものだ。

年間を通して、バットを振ることの重要性は鉄人・金本が身をもって示している。選手が率先して取り組むのが理想だが、首脳陣が強制的にでも、そう仕向けるような環境作りをすべきではなかったか。活躍が期待された桜井の1軍出場はたった25試合。手術明けで途中合流の林も精彩を欠いている。この2人が主軸に座っていれば、優勝は手中にあっただろう。対照的だったのが、西武の大久保打撃コーチ。早朝から打ち込む「アーリー・ワーク」を春季キャンプから導入。シーズンでは、ほとんどの選手が自主的に、遠征先でもオフの日でもバットを振るようになったという。

2けた安打が途切れた7月11日からのチーム打率は2割5分程度。練習で培った「蓄え」がいかに大切か。打線の「ガス欠」が失速を招いた。【阪神取材班】