阪神がわずか2安打で10度目の完封負けを喫し、30日にも自力Vが消滅する危機に立たされた。

不振の佐藤輝明内野手(22)が3打席無安打で、NPB野手ワーストタイの53打席無安打。貧打の象徴となり、甲子園にため息が充満した。ジェフリー・マルテ内野手の両リーグ最多79失策目が手痛い失点につながるなど、週末巨人戦で勝ち越した勢いはどこへ? 連勝を9に伸ばした首位ヤクルトに1ゲーム離され、リーグVへ正念場の戦いが続く。

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次打者席の佐藤輝は、サンズが打ち上げた打球を悔しそうに見つめた。0-2の9回2死一塁。6番サンズが右飛に倒れて万事休す。打線は近本、糸原のわずか2安打に終わり、今季10度目の完封負けを喫した。首位ヤクルトはDeNAに快勝して連勝を9に伸ばし、「0」だったゲーム差は「1」に開いた。矢野監督も「点を取らんとね。どうしようもないし、内容自体がちょっと寂しいかなという内容なので。打線かな」と表情をこわばらせた。

怪物ルーキーがトンネルから抜け出せない。左腕床田に2回見逃し三振、5回一ゴロで迎えた7回の第3打席。2番手右腕島内に2球で追い込まれ、4球目の155キロの真っすぐで空振り三振。これで53打席連続ノーヒット。93年トーベ(オリックス)が最長だった野手の連続打席無安打のプロ野球記録に並んだ。この日も早出特打で振り込み、再昇格後は5試合連続「7番右翼」で出場しているが、Hランプがともらない。

佐藤輝が貧打負けの象徴になったが、締まらない守備もいただけない。3回1死一塁では秋山が床田のバントで二塁封殺を狙ったが悪送球。5回は無死二塁から床田のバントを一塁手マルテが、一塁カバーに入った糸原に悪送球。上本の犠飛で痛恨の2点目を失った。チームの失策数は両リーグ最多の79に膨らんだ。

燃え尽き症候群なのか。週末の東京ドームで2勝1分けと虎党を熱狂させた同じチームとは思えない。今季の阪神は巨人戦に勝ち越した後の次カードで元気がない。前回9月上旬の巨人戦で2勝1分けと圧倒した直後のヤクルト戦が2安打で0-12の大敗。さらに、この日の黒星で今季の甲子園は24勝24敗3分けとなった。矢野政権下で2年間無類の強さを誇った聖地で、強さを発揮できていない。

7番佐藤輝に1本出ていれば試合展開は変わってくる? 指揮官はそんな質問に「毎日そうやで」と返したが、その言葉に苦しさがにじむ。29日以降のスタメン起用については「今のことではわからへん」と否定も肯定もしなかった。早ければ、30日にも自力Vの可能性が消滅する。指揮官の決断はいかに-。16年ぶりリーグ優勝への道のりは、平坦ではない。【桝井聡】

▼阪神は最短30日に自力優勝が消滅する。ヤクルトが29、30日にDeNAに○○なら、阪神は広島に●●、●△で、ヤクルトが○△の場合は阪神●●が条件。

▼今季の阪神は巨人戦で4度勝ち越しているが、直後のカードで苦戦が目立つ。特に初戦は1勝後3連敗で、チームが波に乗れない要因のひとつになっている。4月6日からの巨人戦で勝ち越した直後のDeNA戦こそ3連勝したが、5月に巨人に勝ち越した際は直後のヤクルトとの初戦に14失点で大敗。9月3日からの巨人戦は大山の逆転サヨナラ弾や6点ビハインドを追いつくなど劇的な試合の連続で2勝1分け。だが、直後のヤクルト3連戦はその反動か、2試合で2桁失点するなど1勝2敗に終わった。巨人に2勝1分け直後の今回の広島3連戦も初戦を落としたが、この後踏ん張れるか。

▼ルーキー佐藤輝が3打席無安打に終わり、8月22日中日戦から53打席連続無安打。連続打席無安打の記録は64年嵯峨(東映)の77打席だが、2リーグ制後の野手では、93年トーベ(オリックス)の53打席に並ぶワースト。また、新人では56年秋山(大洋)の50打席を抜き、2リーグ制後のワースト記録を更新。

▼大リーグではクリス・デービス(オリオールズ)が18年9月14日~翌19年4月12日まで記録した62打席。13年と15年に本塁打王にも輝いた大砲だが、16年以降は低打率が続き、年俸25億円超の今季はプレーせず8月に引退表明