衝撃大ニュース、33歳掛布の若すぎる現役引退-。この時期になると選手の引退報道が多くなってくる。88年のシーズン中に明らかになったミスタータイガース・掛布雅之(現阪神レジェンド・テラー)の現役引退は衝撃的だった。33歳という若さ…掛布に何があったのか。トラ番、掛布番を5年担当し、当時ニッカンのパ・リーグキャップを担当していた元大阪・和泉市長の井坂善行氏(66)は「周辺からの情報はあったが、まさかシーズン中に決断するとは」と振り返った。

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優勝争いが佳境に入った今年の阪神だが、テレビ観戦の中で面白いのが解説者の個性だ。個人的にはV戦士の掛布、岡田の解説が好きなのだが、それぞれチーム、采配、選手に対する視点が違っていて、改めて野球というスポーツの奥深さを感じさせてくれる。

開幕以来、掛布さんが終始言い続けているのが、大山を4番で使い続けるべき、という強い思いである。好む好まざるにかかわらず、田淵トレードの後、4番を宿命づけられ、以来、4番にこだわり続けた掛布さんの言葉は重い。33歳で引退を決意したのも、6番でいいならあと何年もプレー出来ただろうが、4番を打てない自分に自分で断を下したのだろう。

2軍監督時代、ニッカンの紙面で「THE掛布雅之」という企画ものを担当させていただいた。その時、1軍を目指す若手に一番言いたいことは、と聞くと、「自分との勝負に勝つこと」と語った。

「野球ってチームプレー、団体競技なんだけど、ゲームのほとんどはピッチャーとバッターの1対1、個人の戦いなんだよね。投手はマウンドで、バッターは打席で、その勝負はだれも助けてくれない。自分の責任において結果を出さなければいけない。だからこそ、自分1人でしっかり練習する強い精神が必要になる」

打てば1面、打てなくても1面。それが阪神の4番である。ここへきて外国人選手の活躍が目立っているが、掛布さんの言葉を借りるまでもなく、「4番大山」で勝ち切って欲しいものだ。それが、ミスタータイガース、4番をはり続けた掛布さんの強い思いでもあるはずだ。