さらば平成の怪物、ありがとう松坂。西武松坂大輔投手(41)が引退試合に臨み、最後は四球を与えて終わった。日本ハム戦に慣れ親しんだ背番号「18」で先発。横浜高の後輩・近藤に5球投じ、最速は118キロだった。右手のしびれと闘いながら懸命に腕を振り、マウンド上からファンに最後の雄姿を披露。試合前に行われた引退会見では涙も見せた。99年から始まりプロ23年間で日米通算170勝。後半はケガに苦しめられ、栄光と挫折、頂点とどん底を味わった平成の怪物は、その伝説に幕を下ろした。

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たとえ個人的な思い入れはあっても、担当記者はファンでもなければ、友達でもない。ただ、松坂大輔は、公私を越えて他人を引きつける「人間力」を持つ、数少ない野球人だった。

初対面は07年。鳴り物入りでレッドソックス入りした怪物は、数十台のカメラに追いかけられても、常に周囲を気遣う、律義で礼儀正しい青年だった。グラウンドに足を踏み入れる際、脱帽して一礼する姿は、横浜高時代同様、メジャーでも変わらなかった。

脚光を浴び続けても、仲間を大切に思い、気遣う男であり続けた。焼き肉店では率先して肉を鉄板に並べ、ゴルフ場では同組競技者のロストボールを真剣に探した。高校時代の旧友が集まると聞けば、自らは不在でも、さりげなく差し入れを届けた。ほんのわずかな事にもかかわらず、夫人の倫世さんと長女直筆の礼状が届いたのも、松坂家の家風ゆえに違いない。

義理、人情に厚く、友と家族に愛情を注ぐ。職種を問わず、年上に敬意を忘れず、同輩、年下には可能な限り、心を砕く。「平成の怪物」と呼ばれても、松坂は「昭和」の薫りが残る大投手だった。【MLB担当 四竈衛】

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