ホークス一筋15年、今季限りで現役を引退するソフトバンク長谷川勇也外野手(36)が、現役最後の打席で、“魂のヘッドスライディング”で生きざまを見せた。0-0の7回1死二塁。「必殺仕事人」のテーマ曲が流れる中、代打で登場。一ゴロに頭から一塁に飛び込んだ。ガッツあふれるプレーが続く甲斐の先制2ランを呼び込み、ベンチで涙があふれた。試合は2-2で引き分け、5年連続日本一につながるCS進出の可能性をつないだ。

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15年のプロ野球生活最後の打席は、しびれる場面で回ってきた。0-0の投手戦。7回無死でデスパイネが右前打を打つと、中村晃が送りバントを決めて1死一塁。絶好の先制機をお膳立てし、工藤監督は「代打長谷川」をコールした。

あるかどうか、わからなかった打席だ。まだCS争いを続けるチーム事情を優先し、長谷川は出場を辞退する意向を示していた。それでも、ここぞの場面で出番が来た。「最後の打席にはなると思っていたんですけど、それよりもこのゲームの重要性、投手戦の中での代打という、そっちの方が重要だなと思った」。気を静めるように、ゆっくりと打席に向かった。いつものように体をくねらせるルーティンで、集中力を研ぎ澄ました。

カウント1-2から伊藤の4球目。外角低めのチェンジアップを引っかけて一塁へのゴロ。微妙なタイミングとなり、長谷川は一塁にヘッドスライディングした。結果はアウト。倒れ込んで天を仰ぐ。「自分の最後の打席でヒットを打とうというより、この戦いにケリを付けないといけなかったので。そのために打ちたかった」と、悔しさがこみ上げた。

ドラマはここで終わらない。長谷川の進塁打で2死三塁。燃えた次打者の甲斐が左翼へ先制2ランを運んだ。打球を目で追った長谷川は両手を突き上げ、次の瞬間には涙があふれ出た。仲間が思いをつないでくれた。長谷川の魂が、チームに乗り移ったようだった。

9回に追いつかれて引き分けたが、負けなかったことでCS進出への望みがつながった。23日からは敵地仙台で、3・5差で追う3位楽天2連戦。長谷川は「試合が続く限りは、勝たないといけない。勝たなくていい試合なんてない。残り3試合、しっかりと戦ってほしいと思います」と、5年連続日本一への希望を託した。

○…長谷川は試合後の引退セレモニーで、涙をこらえながらあいさつした。「順風満帆な野球人生ではなかったと思いましたが、今日1日を通して考えが変わりました。訂正します。長谷川勇也のプロ野球生活15年間は多くの方々に支えられ、順風満帆の野球人生でした」。王球団会長や工藤監督、日本ハム鶴岡らから花束を受け取り、最後は長女と長男からのメッセージを受け取って笑顔を見せた。