今季限りで現役を引退する巨人野上亮磨投手(34)は、「野球はチームスポーツ」を体現する男だった。

3アウト目をとり、マウンドからベンチへ戻るときのこと。ファウルラインを越えるとクルッと体を回転させて、グラウンドを向く。戻ってくる内野手、外野手とハイタッチをして、感謝を示す。「野球は1人じゃない。クールに1人でベンチに帰るのも、カッコいいかも知れないですけど、僕はそういうタイプではないので」。孤独なマウンドでも、仲間と一緒。それが野上のスタイルだった。

19年10月に左アキレス腱(けん)を断裂し手術を受けた影響で、昨季はプロ11年目で自身初の1軍登板なしに終わった。昨オフの契約更改では1億5000万円から80%ダウンの3000万円(金額は推定)に。それでも「何もできていないので」と受け入れた。春季キャンプでは、常に危機感を抱えながら、2軍で若手とともに汗を流した。

背水の陣で臨んだ今季は605日ぶりの1軍登板を果たし、1000投球回の大台にも到達。復活への明るい兆しをはっきりと見せた。だが、5月18日広島戦(東京ドーム)、右肩を痛め、わずか4球で降板。以降はジャイアンツ球場で、ランニング、ネットスローで懸命のリハビリの毎日を送った。そのまま実戦復帰はならなかったが、「野球はチームプレー」にこだわった野上の姿から、後輩たちに伝わるものはあったはずだ。【小早川宗一郎】