今年も、今日8日に12球団合同トライアウトが行われる。ちょうど1年前、巨人から戦力外通告を受け、トライアウトに参加したDeNA宮国椋丞投手(29)が、当時を振り返りながら、今の思いを語った。【取材・構成=久保賢吾】

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あの日から、1年がたった。宮国は、トライアウトを起点に野球観や人生観が大きく変わった。

「あの日から、自分の中での新たな挑戦が始まったと思います。チャレンジし続けることの意味とか、投げられることの喜び、楽しさとか、いろんな変化があったと思います。でも、やっぱり…。想像できなかったですね、1年前の自分が1年後の今を」

20年12月7日、神宮のマウンドに立った。10月に右肩に違和感を覚え、回復途上の中での登板だった。

「勝負の中にも2つありましたね。自分に対してと相手と。難しいですね、あの時の感情は。確率は低いですけど、アピールするにはあの場しかないですから。やらないで終わるよりも、やって終わった方が後悔しないのかなと思ったし、動いてみようと」

チームメートだった小山翔平を二飛、吉川大幾を三振、ソフトバンク堀内汰門には中前打を浴びた。最速は140キロだった。

「いい意味で開き直っていた部分があったので、思っている以上に緊張もしなければ、逆に楽しんで投げられたのはあります。受ける前は少し迷いがあったんですけど、投げた後はスッキリした部分もありましたね」

スタンドに目を向ければ、チームメートだった中川皓太、今村信貴、石川慎吾、のちにレッドソックスに移籍した沢村拓一が応援に訪れた。

「うれしかったですし、感謝の気持ちでいっぱいでした。ただ、申し訳ない気持ちがあったのも事実です。また、みんなと対戦できるように頑張ろうという気持ちで投げました」

トライアウトから約3カ月後の3月にDeNAと育成契約。8月末に支配下登録され、9月7日の巨人戦で自身1518日ぶりの白星を挙げた。

「自分自身、成長させてもらった1年でした。3月まで待ったり、こういう経験をした人はあまりいないと思うので。一番は支えてくださった周りの方への感謝の気持ちしかないですね。もっと、もっと結果で恩返ししていきたいです」