那珂川市の星になる! 阪神梅野隆太郎捕手(30)が27日、地元福岡の那珂川市役所を訪れ、「市民栄誉賞」の第1号として受賞式に出席した。東京五輪金メダリストの凱旋(がいせん)に野球少年、市職員、市民は大盛り上がり。阪神の優勝貢献やWBCでの世界一を目標に、3年前に市に昇格したばかりの故郷をさらに盛り上げる意気込みだ。

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「かっ飛ばせ! 梅野っ!」。約40人の野球少年が阪神のユニホームで梅野の応援歌を熱唱し、那珂川市役所前で出迎えてくれた。「那珂川市民栄誉賞」の第1号に選ばれた梅野は、東京五輪の金メダルを首にかけ、とびきりの笑顔だ。「来年も~?」と振られると、「勝つば~い!」とお立ち台での決めゼリフで返答。人口約5万人、18年10月に市に昇格したばかりの故郷の英雄として、堂々の凱旋だ。

少年たちを見て原点を思い出した。同市の片縄小、那珂川北中出身。小学2年時に「片縄ビクトリー」で野球を始め、当時の福岡ドームでの観戦が楽しみだった。ある時、現ヤクルト監督の高津投手に「ボールちょうだい」と客席からおねだりし、投げてもらったことが大切な思い出だ。

「プロ野球選手からもらったのはいまだに覚えています。『子どもたちに夢を与える職業』という使命があるので、これからも夢を与えられることをやっていきたいです」

思い描くのは、将来的に野球振興活動を行うことだ。同市での野球教室や野球大会の開催を「自分自身はやりたいと思っていますので、市長、お願いします!」と受賞式で武末茂喜市長(69)に直訴。来年以降のオフ、タイミングさえ合えばいつでもOKの意気込みだ。少年野球大会「梅野杯」の開催は、そう遠くないかもしれない。

福岡市近郊にあり、自然も豊かな那珂川市だが、全国的な知名度はまだ低い。だが「梅野が育った町」として定着すれば、さらなる地域活性につながる。そのためにも「優勝報告をできるように戦っていきたい」と来季阪神をVに導くことを宣言。さらに、23年3月に開催が見込まれる第5回WBCに向けても「阪神で活躍してこそ選ばれるもの。シーズンを戦い抜いて選考に入りたい」と意欲を燃やした。故郷でたくさんの笑顔が待っている。“新那珂川大使”が、決意を新たにした。【中野椋】

◆那珂川市 福岡県の中西部にあり、福岡市の都心部から約13キロメートルのところに位置する。車なら福岡市まで40分ほどの好立地でベッドタウンとして栄え、18年10月には、旧那珂川町が「人口5万人以上」の市制施行要件を満たし、合併を経ずに市に昇格した。市の北部にある博多南駅には新幹線の車両が止まり、博多駅まではわずか8分程度。市内の南北を貫き、福岡市中心部を流れ博多湾に注ぐ那珂川が由来。近年健康野菜として注目されている「ヤーコン」が特産品。主な出身有名人は阪神梅野のほかに、ロッテ、中日、巨人などで投手として活躍した前田幸長氏がいる。