広島としての1年が始動した。ドラフト1位の黒原拓未投手(22=関学大)が8日、広島・廿日市市の大野寮に隣接する室内練習場で同期入団の10選手とともに合同自主トレの初日を迎えた。一番乗りで姿を見せたドラフト1位ルーキーは、キャッチボール、ノック、ランと軽快にメニューを消化。ひんやり寒い1日だったが鯉の若人の熱気が室内を包んだ。

   ◇   ◇   ◇

いても立ってもいられず、部屋を飛び出した。新人合同自主トレの初日、黒原は育成4位の坂田怜投手(22=中部学院大)とともに一足早く、寮を出た。「朝(坂田に)ラインをして、ちょっと早めに行こうと(伝えた)」。坂田も二つ返事で快諾し、一番乗りで室内練習場に足を踏み入れた。「初めての練習というのもありますし、新しいスタートなのでワクワクしてちょっと早めに来て体を動かしてました」。指定の練習開始時刻は午前10時。衝動のままに30分以上も早く練習を開始し、同期の先陣を切った。

左腕はストレッチ、ウオーミングアップと淡々とこなす。表情が一変したのはキャッチボール時だ。生まれて初めて受ける、揺れながら落ちる球「ナックル」に目を丸くした。ペアの坂田は投球の8割近くをナックルが占める技巧派右腕。キャッチボールから爪を立て、その魔球を連投していた。「最初は捕れるんかなというイメージでした」。黒原は捕球寸前まで軌道を見つめ、直前にグラブを出す。不規則な軌道に苦笑しながら肩を温めた。「単純に怖い。(変化は)そのときのボールによるのでわからない。集中して捕るようにして。注意しないと体に当たりそう」。坂田が育成4位指名を勝ち取った魔球に身をもって感心した。

【関連記事】広島カープニュース一覧

黒原にも最速152キロを誇る一級品の武器がある。お披露目となるブルペン入りのタイミングは「体が100%で投げても大丈夫なようになったら」と、肩や肘と相談して決める。「張り切り過ぎてケガしたら元も子もないと思う。そこはしっかりと自分の体を見ながら」。ドラフト1位ルーキーは確実に逆算を進め、調整を重ねている。【前山慎治】