阪神にとって特別なキャンプが幕を開けた。矢野燿大監督(53)が今季限りでの退任を表明した衝撃から一夜明けた1日、1軍は沖縄・宜野座でキャンプイン。百北(ももきた)幸司球団社長(61)は、指揮官の揺るぎない決意を受け止め、37年ぶりの日本一を達成しても勇退の方針は変わらないことを明かした。日本ハム新庄監督が「阪神は変わるのでは」と話し、ファンからは賛否両論が巻き起こるなど、異例ずくめの2月1日になった。

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宜野座は何事もなかったように晴れていた。矢野監督の退任表明から一夜明け。激震のキャンプインとなったが、指揮官もナインも心の動揺は見せず、黙々と1日のメニューをこなした。

前日1月31日に恩納村の宿舎で行われた全体ミーティング。矢野監督はマイクを握り、今季限りで退任する覚悟を明かした。その横で耳を傾けていたのが百北球団社長だった。一夜明け、キャンプ初日を視察した同社長は、フロントとしても矢野監督の意思を尊重し、今季限りの退任を受け止めることを明かした。

「矢野監督のこの1年にかける強い思い(を感じた)。矢野監督の野球の集大成になれば。ひいてはリーグ優勝、日本一につながるのではということです。全幅を持って信頼して今シーズン任せていこうという思い。チーム、フロント一丸になってやっていきたい」

唐突な退任表明だったが、水面下では話し合いを重ねていた。矢野監督は昨シーズン終了後に球団に伝えたと明かしている。百北社長は「昨日お話しになるということは事前には聞いておりました」と説明。満を持しての表明だった。

日本一でも今季限りの退任が覆ることはないという。同社長は「この1年にかける監督の思い、意思を尊重したいと我々は思っています」と語った。17年ぶりのリーグVを達成してもやめる。37年ぶりの日本一を達成してもやめる。優勝イコール、勇退を意味する。

矢野監督はキャンプ初日から精力的に動いた。ブルペンでは西勇、青柳ら主力にルーキー鈴木、桐敷の投球をじっくりと見つめた。サブグラウンドにも足を運び、ノックで揺られる選手の動きを追った。監督で迎える最後のキャンプイン。「動きはしっかりと出た初日だった」と語ったが、「もうちょっと活気というか、声、元気、何かそういうものがほしかった」と注文も忘れなかった。

キャンプイン前日の退任表明は、少なからず今後に影響を及ぼす。百北社長は後任監督について「それは、まあ…。これから野球に集中していきたいので、(報道の)皆様も見守っていっていただきたい」と制した。シーズンに全精力を注ぎ、有終を目指す、阪神史上例を見ない特別なキャンプが始まった。【桝井聡】