登場曲はZARDの「負けないで」-。4年目の21歳が西武の連敗(1分け含む)を7で止めた。牧野翔矢捕手が、バットでは2回無死一、三塁でチーム51イニングぶりとなる適時打を放った。プロ初打点だけでなく、リードもさえて、前日9日に続き2試合連続となる完封リレーをアシスト。5回無死一、二塁では狙ってゴロを打たせ、三重殺でピンチを防いだ。苦境のチームの中で、存在感が光った。

【西武】トリプルプレー!来日初先発エンスが初安打許した直後 ピンチに嫌な流れ1プレーで救う

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負けないで もう少し 最後まで走り抜けて-

国民的名曲のサビが響く。牧野は全身に期待を感じ取って、左打席に入った。試合前まで首位ソフトバンクとは6・5ゲーム差。離れてても、ファンの心はそばにいる。日本一という遥かな夢を追いかけて。

2回無死一、三塁。ただ、これまでチームは50イニングもタイムリーがない。そんな状況だって…、ヘッチャラな顔。「セカンド、ショートにゴロを打てば」“どうにかなるさ”と思っていた。3球目のスライダーを強く振り抜くと、打球はライト前まで転がった。自身のプロ初打点は、チームも待望の適時打。「結果、ヒットになって良かった」と喜んだ。高山打撃コーチの選曲によって、昨秋キャンプのBGMで「負けないで」が流れていた。「いい歌だな」と心に染みて、登場曲としていた。

捕手としても光った。初登板初先発のエンスをうまくリードするなど、2試合連続の完封リレーを演出。最大のピンチだった5回無死一、二塁は三重殺で切り抜けた。そこも明確な意図を持ったリードがはまった形だ。

ソフトバンク甲斐に送りバントを試みられたが、ファウルと見逃しで、カウント1-2と追い込んだ。4球目はバスターでファウル。「当てにきているな」と感じ取った。「ゲッツー取りたい」と外角のスライダーを要求。「エンスが腕しっかり振っているから」コースは要求より内寄りとなったが、結果的には三ゴロを打たせる形に。三塁山田がベースを踏み、ボールは二塁外崎、一塁呉念庭と素早く送られ、一気に3つのアウトをもぎ取った。

辻監督も「いい働きです」と目を細めた。山川、森と主力が戦線離脱し、負け続けていた中、新しい力が輝いた。【上田悠太】

◆牧野翔矢(まきの・しょうや)2001年(平13)3月4日、石川・穴水町生まれ。小3から穴水学童野球クラブで野球を始める。穴水中では捕手で主将。遊学館では1年春からベンチ入りし、2年春から正捕手。高校通算15本塁打。18年ドラフト5位で西武入団。今年4月6日楽天戦でプロ初出場し、初打席初安打を記録した。178センチ、78キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸570万円。