阪神が巨人を下し、今季初の連勝だ。新外国人アーロン・ウィルカーソン投手(32=ドジャース3A)が、6回3安打1失点で来日初勝利。甲子園の巨人戦で来日初登板初先発初勝利は、球団助っ人で初めて。3年ぶりに4万人超を集めた「伝統の一戦」で、今季初のカード勝ち越しも決めた。息を吹き返しつつある虎が、勢いそのまま3タテを食らわせる。

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万雷の拍手の中、白いヘアバンドをつけたウィルカーソンが、岩崎から勝利球を受け取った。一時は食品会社の冷凍食品部門で夜間労働した苦労人。「Freezer(フリーザー)」のニックネームまでついた。野球を諦めかけたこともある。それでも今、満員の甲子園に立っている。

「こんなにたくさんのファンの目の前で投げられて、こんなにサポートしてくれて本当にうれしいです」

白と黄色に染まったスタンドに感謝。白球はそっとパーカの左ポケットにしまった。

「どの球種でもストライクが取れる」と自信を持つ制球が光った。90球のうち直球は36球。初回1死一、二塁では岡本和をチェンジアップで左飛。続く丸はスライダーで右飛に仕留めた。「最初を切り抜けて落ち着けたのが大きかった」。持ち球をまんべんなく使い2回から4イニングは無安打。6回も最少失点で切り抜け、お役御免となった。

ジャパニーズドリームをつかむため、日本文化に染まろうとしている。日本語は勉強中。好きな言葉も「まだないんだよ」と困り顔だ。それでも、覚えたての「ヤキトリ」で注文に成功したこともある。「まずは料理を頼めるようにしたい。注文した後に何か言われても、今は『ハイ』って繰り返すことしかできないけど」。勝利のたび、妻と子どもの待つ食卓はにぎわう。今は苦労する注文の時間も、シーズン後半には至福の時になっているはずだ。

お立ち台では「タイガースファン アイシテル!」と日本語であいさつ。練習の成果を発揮し、虎党の心をつかんだ。球団助っ人では初となる甲子園の巨人戦で来日初登板初先発で初勝利を挙げ、チームは今季初の連勝とカード勝ち越し。ナイスガイの大号令から逆襲が始まる。【中野椋】

◆アーロン・ウィルカーソン 1989年5月24日、米テキサス州生まれ。独立リーグから14年にレッドソックスと契約。16年ブルワーズ移籍、17年メジャー初昇格。昨季はドジャース傘下3Aでプレーし23試合(先発19)で8勝5敗、防御率3・86。メジャー通算14試合(先発3)で1勝1敗、防御率6・88。球種は直球、カーブ、チェンジアップ、スライダー。長髪とひげがトレードマークで俳優のキアヌ・リーブス、ブラッドリー・クーパー似と言われることも。背番号52。191センチ、95キロ。右投げ右打ち。