阪神、ロッテのコーチを歴任し、阪神V戦士の今岡真訪氏(47=日刊スポーツ評論家)が独自の視点で球界の話題を語る「今岡スペシャル」は、PL学園の先輩にあたる中日立浪和義監督(52)にフォーカスします。勝負の厳しさに徹する一方で、選手の長所を引き出そうとするマネジメントに着目。京田陽太内野手(28)に試合中の2軍行き通達、根尾昂外野手(22)の二刀流挑戦…。根底にある「立浪イズム」を感じ取りました。【取材・構成=酒井俊作】

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まだ5月ですし、戦っている途中ですが、今年から中日を率いている立浪監督の戦い方に接して、古き良き、いいモノといまの時代のいいモノを融合させているように感じますね。

僕自身もずっと注目してきた根尾選手が、8日に2軍の阪神戦で投手として登板しました。「根尾」という選手に対して、いろんな可能性を探りながら、取り組ませておられると感じました。人の能力を生かすために、どうやって長所を引き出すか。そういう意思が、すごく伝わってきます。決して話題性でやっているわけではないと思います。

僕も阪神、ロッテで指導して、人を生かす、能力をいかに引き出すかが、いかに大切かを痛感してきました。周囲には、打者として結果が出ていないから投手をさせているんだと感じる方も多いでしょう。でも実際は、そういった意図はないはずです。二刀流は根尾選手の能力を引き出す作業の1つだと映ります。

根尾選手は大阪桐蔭のとき、投手で投げて、ショートを守って、5番を打っていました。二刀流は根尾選手がもともと持っているリズムのはず。エンゼルス大谷選手の活躍で、いま、二刀流に取り組めば注目されがちですが、根尾選手からすれば、特別なことではない。こういう背景までとらえれば、立浪監督は現代の野球にそった生かし方をされているのだと思います。

チームを見渡せば、勝負に対する厳しさも示しています。4日のDeNA戦では、試合中に京田選手に2軍行きを通達したとのことでした。立浪監督が、もともと、すごく期待している選手だと思います。守備力が高く、今季は打てなくても8番で先発起用してきました。我慢して使い続ける一方で、たとえ、主力であっても非情になれる。指導者として、なかなかできません。メリハリがきいていると感じます。根尾選手や京田選手へのアプローチを見ていて、思いやりと厳しさの両面を持っておられる。こういったマネジメントに接し、昔ながらの指導をする一方、いまの時代に合った指導もされていると感じますね。

立浪監督はあこがれの存在で、僕がPL学園に入学するキッカケでした。3月に、名古屋のバンテリンドームにあいさつに伺ったとき、長い時間、いろいろ教えてくださって、うれしかったですね。まだ、シーズンは始まったばかり。中日がどのように変わっていくのか、これからも見守りたいと思います。

◆中日京田の2軍通達 5月4日DeNA戦(横浜)の4回、二遊間へのゴロをはじいて内野安打にし、直後の5回に代打を送られた。立浪監督は「取れるアウト。顔を見ていても精彩がない。2軍でやり直して来い」と、直接通達。試合途中に名古屋に強制送還された。京田は新人の17年から3年連続140試合以上出場し、5年連続で100試合以上出場してきた遊撃レギュラー。今季は26試合で打率1割5分7厘と低調だった。16打席無安打で、5月5日に出場選手登録を抹消された。

◆中日根尾の二刀流 5月8日ウエスタン・リーグ阪神戦に遊撃で先発出場。6点リードの9回に登板した。豊田を三ゴロ。高寺の打席で2球、150キロを計測し、大阪桐蔭時代の自己最速に並んだ。3連打で1点を失ったが江越を空振り三振。2死で降板し、遊撃に戻った。甲子園での登板は18年夏以来。立浪監督は「気分転換に投げさせた」と説明した。今季は外野手として開幕1軍も出番は少なく、出場選手登録を抹消された4月21日時点で代打での1安打にとどまり、打率1割4分3厘だった。遊撃再挑戦のため2軍降格し、5月10日に再昇格した。

◆今岡氏の中日立浪監督評論VTR 開幕直前の3月、鳥谷敬氏と対談時「注目しているのは中日。立浪監督は厳しいことを言わなくても、選手にはそれが自然に伝わる方。今季は本当はもっと力があるんだろうなという投手や野手が成績を残して、チームに貢献するような選手が出てくる気がします。立浪監督になって、間違いなくチームは変わる」と評していた。3月にはバンテリンドームに新指揮官を訪問。「ゲームになれば臨機応変に、そこで起きたことに的確に対応し、手を打っていくと思います」と紙面で評論した。