プロ初勝利の思い出として胸に刻まれた一戦からちょうど1年。ロッテ佐々木朗希投手(20)が再び阪神打線と相まみえた。

完璧な立ち上がりだった。速球でファウルを打たせ、緩急で打ち取る。2番中野への決め球162キロはほぼど真ん中。それを全く反応させず見逃し三振に仕留めた。初回、真っすぐとフォークだけで上位3人を抑え込んだ。

しかし徐々に、抜け球が増えた。「投球の内容自体はそんな悪くなかったんですけど、思うようなボールを投げられなかったりとか、質的にはすごくひどかったなと思います」。左打者を7人並べた相手打線に対し、走者を置くと直球がシュート回転して右に流れた。逆球、暴投もあった。制球、打者の手元での球威に改善の余地を見いだした。

昨年の5月27日。同じ日、同じ阪神戦でプロ初白星を挙げた。うれしさと同時に反省も残った。5回で7安打され、4失点。勝ちがついたのは味方が打ってくれたからともいえる。あの日も「自分の納得のいく球をあまり投げられなかった」と言った。

ただ1年前と違うのは、本塁を守り切った。6回90球でマウンドを降りるまで、4度得点圏に走者を背負ったが1点も与えなかった。昨年適時打を打たれた4番佐藤輝は3打数無安打、2三振に抑えた。「1発のある打者なので丁寧に投げられた。悪いなりにも点を与えないようにできました」と成長を感じている。

両リーグトップの6勝目を手にすることはできなかった。だが黒星もまたつかなかった。安定感に変わりはない。【鎌田良美】