主役は俺だ。阪神青柳晃洋投手(28)が「日本生命セ・パ交流戦」でBIGBOSS率いる日本ハムを手玉にとった。8回無失点の快投でリーグトップに並ぶ6勝目。規定投球回に再び乗り、防御率0・98はダントツ。勝率と合わせて「投手3冠」の無双投球ぶりに、阪神OBの新庄監督は奇策を打ち出せず、虎党なら誰もが知るアノ人のものまねで脱帽。阪神は2度目の4連勝で3カード連続の勝ち越し。交流戦首位も見えてきた。

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試合後、矢野監督は感染対策で全員と「空タッチ」をしていたが、ラストの青柳だけは特別だった。がっちりと右手を握りしめた。最大級の敬意だった。

「本当に調子が良くなかったんですけど(坂本)誠志郎のおかげで、内野ゴロや打ち損じが多かったと思う。要所でいいところに投げられました」

不調でも昨季最多勝のサイド右腕は勘どころを知っていた。2人以上の走者は背負わず、三塁も踏ませなかった。左打者5人の打線に、今年磨きをかけたシンカーが効いた。初回は清宮を、2回は宇佐見を。完全にタイミングを外し、波に乗った。対照的に地をはうような140キロ台の速球を投げ込み、惑わせた。

BIGBOSSもジョークで脱帽するしかない。「今日の青柳君はですね、素晴らしかったですね~」。開口一番、阪神のレジェンド掛布雅之氏のものまねで表現した。甲子園凱旋(がいせん)カード。「手足が出なかった。面白い作戦をすることなく終わりました」と白旗だ。警戒していたという青柳は「細かい動きがなかったので打者と勝負しました」と胸を張った。

新型コロナ感染で初の開幕投手がなくなり、3週間も出遅れながらトップに並ぶ6勝目。1敗も完全試合未遂の中日大野雄に投げ負けた試合だ。防御率0・98と驚異の安定感。「数字はすごいですけど実感はない。いい感じで試合を作れているので継続したい」。

好きな言葉は「やればできる」。中学の軟式野球部で3番手。川崎工科高ではドラフト漏れ。誰よりも練習した自負はあった。「人生はうまくいかないことばかり。でも毎日つらくても、ずっと続けていくうちにできるようになる」-。

矢野監督も野球への真っすぐな姿勢を評価する。「頭が下がる。打席での何とかもう1点取ってやるという姿勢も、チームにいろいろな影響を及ぼしてくれている」。6回1死満塁の打席で5連続ファウルしたシーンを自ら挙げた。

今季最多を更新した超満員の甲子園。青柳はファンに何度も手を振った。「『絶景』と言っていいのか分からないけど、やっぱり阪神ファンは素晴らしいと思いました」。エースの働きで2度目の4連勝。借金は4月8日以来となる1桁になった。リーグ戦は最下位のままでも、交流戦は7勝4敗で2位タイに浮上した。開幕からどん底を見た阪神が、逆襲モードに入った。【柏原誠】

○…近本が5回に2戦連続となる適時打を放った。中野の適時打で2点差に広げ、なお2死二、三塁。杉浦の低めチェンジアップを右前へ。「試合状況的にもいい1本だったかなと思います」。7戦連続安打で、交流戦の打率は3割2厘。4回は中堅正面へのライナーでアウトとなり「内容自体はいい打球だったので『ああっ!』って心の声がつい出てしまった」と珍しく悔しさを表に出す場面もあった。

○…「2番遊撃」の中野が攻守で安定感を見せいる。5回2死一、二塁で杉浦の直球を左前打に運び追加点。「何とか塁に出て、揺さぶりたいと考えていたので、得点につなげて良かった」とホッとした表情。守備では2回1死一塁、浅間の二遊間へのゴロを糸原に鮮やかにバックトスし二塁封殺を決めるなど軽快だった。

○…守護神岩崎がリーグ4位タイの11セーブ目を挙げた。8回無失点と快投の青柳からバトンを受けて登板。1死から清宮に中前打を許したが、続く野村をチェンジアップで遊撃併殺に仕留めた。スコアボードに最後のゼロを刻んだ頼れる左腕は「勝つことが出来て良かったです」と、ファンにも浸透している「定型文」の決めぜりふを口にした。

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