阪神湯浅京己投手(22)がプロ4年目で待望の初勝利をつかんだ。お立ち台でウイニングボールを持参。ぎゅっと握りしめて、気持ちをストレートに表現した。

「素直にうれしいですし、リハビリが長かったので。本当にすべての人に感謝したいなと思います」

ビッグプレーで8回の勝ち越し劇の流れをつくった。先発青柳が同点打を献上し、1死二塁で託された。溝脇への5球目。一塁側への痛烈な当たりを反転してキャッチすると、二走加藤翔の飛び出しに反応。三塁糸原に送球した。「冷静に判断して、準備をしっかりしていた。アウトに出来て良かった」。

反骨心が原点だ。聖光学院高3年夏。夏の甲子園のグラウンドに湯浅はいなかった。県大会では背番号18を背負い、自己最速を更新する145キロをマーク。しかし、入学直後から腰の成長痛に苦しみ、本格的に選手として復帰したのは2年秋。経験不足が響いた。

「見返してやろうと思ってやっていました。僕をベンチに入れなかったことを甲子園期間中に後悔させてやろうって」

鳴尾浜の選手寮「虎風荘」から道路を挟んで向かいにある臨海公園野球場では、チームのために腕を振る「打撃投手」としてテレビ番組に取り上げられたことも。甲子園期間のシート打撃では、大会メンバーを相手に簡単にはバットに当てさせなかった。プロ入り後も、腰椎の疲労骨折など故障に苦しみ、去年までリハビリが続いたが、高校時代の夏の経験があったから、乗り越えられた。

今季は開幕から中継ぎでフル稼働し、28試合でリーグトップの19ホールドを挙げている。球宴も中継ぎ投手としてぶっちぎりの1位をキープ。矢野監督は「自分の中で向上心を持ってしっかり投げていてくれている。どこで出しても湯浅の成長につながるかなというところまで来てくれている」とうなずいた。ウイニングボールの贈り先を問われると、「やっぱり両親かな」と右腕は照れながら言った。反骨心を胸に、湯浅の快進撃は続く。【三宅ひとみ】

 

▽阪神湯浅の父栄一さん(50、法大野球部出身。幼少期から練習に付き合う)「昔から負けず嫌いでしたから、それは今でも変わってないと思います。2人で小学校、中学校と毎日練習。納得いくまで終わりませんでしたよ。うれしいです。それしかない。初勝利、おめでとう」

▽阪神湯浅の母衣子さん(50、初勝利を三重・尾鷲市の実家でテレビ観戦で見届け)「ヒーローインタビューで話しているのを見たら、リハビリ期間のことが頭によぎって…。本当にうれしいです。普段は人前で泣かない子だから、我慢してたんじゃないかな。ここからが始まりだと思うので、これからもチームのために頑張ってほしいです」

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