村上ひとりにやられた…。阪神が今季3度目の6連勝を目前で逃した。31日のヤクルト戦(甲子園)は1点リードの9回に守護神・岩崎優投手(31)が同点弾を浴びるなど、ヤクルト村上に3本のアーチをたたきこまれて壮絶な逆転負け。痛い星を落とし、ヤクルトとは再び10ゲーム差に広がった。

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痛恨の逆転負けを喫した直後、阪神大山悠輔内野手(27)は深々と観客に頭を下げた。白マスクで覆われた表情からは目元しか見えない。それでも心の底にある感情は容易に想像できた。土壇場で勝利を逃した以上、この日の1打点に満足できるはずがなかった。

両チーム無得点で迎えた4回裏無死一、三塁。3番近本、4番佐藤輝の連打でもぎ取った好機を、泥臭くモノにした。2ボールからの3球目。右腕原の高め144キロシュートを狙いすましたかのように、広く空いた一、二塁間に押し返した。「ガンケルが良い投球を続けてくれていた。早く先制点が欲しかった」。欲をかかず、役割に徹した結果の先制打。それは背番号3の魅力が詰まった一打でもあった。

「時には苦しく打つ練習もやらないとダメなんじゃないか?」

2年前、矢野監督からアドバイスを受けて以来、懸命に打撃の引き出しを増やしてきた。フリー打撃では柵越えに目もくれず、犠飛や内野ゴロを意識したスイングも繰り返す時間帯も作った。「僕はチャンスで回ってくる場面がすごく多い。そこをいい意味でプラスに考えるというか、いい意味で余裕を持つためにも、引き出しを増やしたいと思って」。どんな形でも好機で事を起こせるように-。地道な努力はコツコツと数字に結びついている。

今季チーム最多の打点は70に到達した。振り返れば、阪神で4年連続70打点をクリアした選手は過去にたった5人しかいない。藤村富美男、田淵幸一、掛布雅之、ランディ・バース、金本知憲。偉大なる先人の背中を追う日々はまだまだ続く。「勝てれば何でもいいんです」と常々口にする主砲。8月も変わることなく、勝ちを呼び込む打点にこだわり抜く。【佐井陽介】