BIGBOSS体制1年目の日本ハムは、12球団最速でリーグ優勝の可能性が消滅した。

新庄剛志監督(50)は昨秋の就任会見で「優勝なんか一切、目指しません」と宣言。「トライアウト」と位置付けた今季は支配下69選手のうち、故障者と高卒新人投手を除いて12球団最多の64選手を1軍で起用した。先入観を排除した“BIGBOSS野球”で得た収穫と課題を日本ハム担当が分析。続投が決定的な新球場元年となる来季へつなげたい。

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6年連続のV逸が決まった日本ハムだが、1年契約の新庄監督の来季続投は決定的だ。球団は来年3月、北海道北広島市に新たな本拠地となる新球場「エスコンフィールド北海道」の開場を控える。球団幹部は「こちらは昨年の段階で、新球場の開場を見越して監督を依頼している」としており、選択権は新庄監督に委ねられている状況。同監督は「(選手を)成功させたい。成長させて(監督を)卒業したい」など、これまでに何度も監督2年目への意欲を示しており、続投へ支障はない。チームは開幕直後から最下位に沈んできたが、球団幹部は選手の起用法など「見ていて勉強になる部分が多い」と評価しており、シーズン終了後にも正式契約を結ぶとみられる。

【収穫】

新庄監督は新人6選手を含む11選手を1軍デビューさせるなど、ここまで12球団最多の64選手を起用した。BIGBOSS就任直後に自身のツイッターで「僕と一緒に戦って行く選手全員を1回は、あの大歓声の1軍のグラウンドに立たせる事を、ここで約束します」と発信。“公言”通りにタイミングを計りながら経験値という成長要素を与え続け、プロ初勝利は4人、プロ初安打は8人が記録。地道にまき続けた種は、少しずつ芽吹いてきた。

前例にない采配や選手起用は、チーム全体の野球の幅を広げた。攻撃面では2ランスクイズ、満塁エンドラン、重盗などの奇策を多用。セオリーにとらわれない柔軟な発想をチーム全体に植え付けた。堅守が特長の谷内を好機で代打起用し、勝負強さを発揮させるなど、選手の新たな一面を引き出す用兵も多い。新庄監督が「開幕4番」に抜てきし、首位打者争いで独走する松本剛も、その1人だ。

来季は「ガッチガチでいく」というレギュラー陣に誰を抜てきするか。精神面も含め、BIGBOSSイズムを体現できる戦力の見極めは十分にできた。

【課題】

新庄監督はここまで全試合で打順を変えて試合に臨んだ。後半戦から、捕手とDH以外のメンバーを固定した戦いを予告していたが、チームを襲ったコロナ禍で実現できず。松本剛を除いて、調子を見ながらの日替わりスタメンが続いた中で、打線の軸となりそうな清宮ら若手野手が、突出した成績を残してブレークするには至らなかった。

多彩な作戦を用意した新庄監督だったが、同時に選手が確認するブロックサインも複雑化。状況的に“あり得ない”作戦もBIGBOSSなら…と、うのみにして失敗に至ることもあった。奇策にも動じない精神面の強さはチーム全体に浸透したが、サインを完璧に遂行するための全体的なスキル不足は否めなかった。

投手陣で奮闘したのは大卒新人で開幕投手を務めた北山や、中継ぎとして奮闘した吉田ら少数。先発陣は昨季までの主力である上沢、加藤、伊藤に続いて先発ローテに定着した投手はいない。ブルペンも役割を固定できないまま、シーズンは終わろうとしている。新庄監督は就任会見で「チームに投手3人、野手4人のタレントをつくり上げていけば、楽しいチームになる」と言ったが、投打での新たなタレント育成は来季の巻き返しへ必須となる。

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