偉大な先輩に、恩返しの白星を-。 阪神藤浪晋太郎投手(28)が8日、今季限りでの現役引退を発表した中日福留孝介外野手(45)への感謝の思いを語った。13年の“同期”入団から8年間ともにプレーし、藤浪のプロ野球人生に大きな影響を与えた1人だった。この日は先発予定の9日DeNA戦(横浜)に向け、甲子園で調整。大先輩から学んだ教訓を胸に、今季3勝目を目指す。

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9日のDeNA戦に向けての話から「福留引退」の話題に切り替わると、藤浪は背筋を正し、思いの丈を話し始めた。

「たくさんのことを教えていただきましたし、野球に対する考え方、奥深さをよく教えてもらった。いろんな話をしてもらったことに感謝をしています。長年一緒にやらしてもらった身として、寂しいなと…」

藤浪が高卒ルーキーの13年に福留がメジャーからNPBに復帰し、入団したのが阪神だった。虎の“同期”として、8年間ともにプレー。16年8月30日の敵地中日戦で1回7失点でKOされた際に「やるべきことをしっかりやれ」と、野球に取り組む姿勢に対してベンチで厳しく叱咤(しった)されたこともあった。

「そんな考え方、発想があるんだというのを常々プレーでも体現されていて、言葉でも発していた人でした。自分の野球観にも関わってくるぐらいいい話をたくさんしてもらいましたし、すごく尊敬しています」

福留が中日に移籍し、20年12月の入団会見で対戦したい投手について「やっぱり晋太郎ですかね」と即答していた。初対戦は21年4月2日、福留が6回に代打で出場し、内角低め158キロ直球で見逃し三振に斬り、藤浪に軍配。同年6月23日の対戦も代打で、四球だった。わずか2打席だけだったが、2人にとって記憶に残る対戦となったに違いない。

3勝目を狙う藤浪は、相性抜群の「ハマスタ」で今季初対戦のDeNA戦に臨む。通算11試合に登板し8勝1敗で、14年から7連勝中。13年にプロ初ヒットを放ち、18年にはグランドスラムを決めた地でもあり、打撃でも得意としている。ただ、藤浪は「すごく相性がいいとは別に思わないですし、警戒するところは警戒して、気を引き締めていきたいです」と至って冷静だ。

4位広島が急接近する中、Aクラス死守へ負けられない一戦。「まずゲームをつくることに集中して、その上で勝てるピッチングができれば」。“同期”から学んだ教訓を胸に秘め、快投でチームを勝利に導く。【古財稜明】

 

【藤浪と福留】

◆同期入団 ともに12年オフに阪神入団。福留はヤンキース傘下から、そして藤浪は大阪桐蔭からドラフト1位で。

◆初登板援護ならず(13年3月31日ヤクルト戦)藤浪のプロ初登板試合で、福留は3打数1安打。完封負けに福留は「俺らの責任」とわびた。

◆公開説教(16年8月30日中日戦)藤浪は初回に満塁被弾はじめ7失点。ベンチ内で福留は、ベースカバー遅れなどについて「投げること以外にも、やるべきことをしっかりやれ」と厳しく叱責(しっせき)した。

◆対戦希望 20年オフに中日復帰の決まった福留は、入団会見で対戦したい投手を問われ「晋太郎です。ポテンシャルの高さは誰もが認めているところ」と即答した。一方の藤浪は「勝負どころで回ってくると嫌なバッターなので。しっかり抑えられるように」と気を引き締めた。

◆恩返し(21年4月2日)藤浪VS福留の初対決。6回2死一塁の場面で、158キロ速球で見逃し三振。藤浪は「勝負どころかなと思ったので腕を振りました」と感慨深げだった。福留は「これからも対戦はあるので、しっかり打てるようにやりたい」と振り返った。