首位ソフトバンクが優勝マジック11を初点灯させた。自力優勝の可能性を残していた4位楽天に7-3で勝利。大混戦のパ・リーグを抜け出し、2年ぶりのリーグ制覇に大きく前進した。先発の和田毅投手(41)が、5回4安打無失点の好投で今季6勝目。チームを5連勝に導き、NPB通算150勝に王手をかけた。チーム最年長の大ベテランには、どうしても勝ちたい理由があった。

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最初で最後の大ピンチは、幸運の女神が味方した。1回先頭。和田は1番山崎に三塁打を浴びた。無死三塁。先制の危機で、2番鈴木大を投手正面のゴロに打ち取った。和田は三塁に送球。三走の山崎は飛び出していたが、三塁手の周東が捕球し損ねた。

セーフ…かと思いきや、山崎はベースから離れた場所で、あおむけのまま大の字に倒れていた。すかさず周東が山崎にタッチしアウト。一転、1死一塁にかわり、無失点で切り抜けた。

和田 川村さんが助けてくれたのかなって。初回はそうだと思う。力を貸してくれたんだなと思って投げていました。

9月15日は、2年前の20年にチームのコンディショニング担当を務めていた川村隆史さんが、クモ膜下出血のため55歳で亡くなった命日だった。自軍ベンチに川村さんの「背番号01」のユニホームが掲げられ、左腕も懸命に腕を振った。「川村さんの命日に昨年は勝つことができなかった。勝ちたいということで、自分のピッチングを川村さんが助けてくれたんだと思います」。天国の川村さんが、初回のピンチで幸運を呼んでくれたと感じた。和田の目は、少し潤んでいた。

5回4安打無失点の好投で、今季6勝目を挙げた。NPB通算150勝にもあと1勝。チームを5連勝に導き、11日まで上位3チームが0差で並ぶ大混戦だったパ・リーグで、ソフトバンクが優勝へのマジックナンバー「11」をともした。藤本博史監督(58)は「マジックは意識してないです。1戦1戦勝っていくだけです」と引き締めたが、優勝に大きく前進した事実は揺るぎない。

球団はリーグ優勝または日本一を達成した際に備え、11月27日に福岡市都心で優勝祝賀パレードを実施する方向で準備を進めている。実現すれば19年以来3年ぶり。福岡、九州の誇り高き「常勝軍団」が、優勝へのカウントダウンをスタートさせた。【只松憲】

▼ソフトバンクに優勝へのマジックナンバー11が点灯した。2位オリックスは、残り10試合に全勝で79勝62敗2分け、勝率5割6分。ソフトバンクは残り14試合でオリックスとの残り3試合に敗れても、他カードで11勝すれば80勝61敗2分け、勝率5割6分7厘で上回る。現日程での最短Vは23日。

○…3番今宮が今季12度目の猛打賞をマークした。まずは1点リードの3回1死三塁。「ランナー三塁のチャンスだったので、最低限外野フライという気持ちで打席に入りました」と、辛島から右翼線へタイムリー二塁打。5回先頭では中前打を放ち、8回にもダメ押しの中前適時打を放った。すでに今季の規定打席をクリア。打率も3割ちょうどに乗せた。

○…荷物遅延のトラブルにめげず、中村晃が先制点をたたき出した。0-0の2回1死満塁で、辛島から中堅へ犠牲フライ。「今日は川村(隆史)さんの命日で、勝ち星をという思いが強かったです。入団してから指導していただいたおかげで、今もプレーできていると思います。何より勝つことができてよかったです」。打線の爆発を導き、天国にささげる決勝打となった。

▽ソフトバンク柳町(5回に代打で5点目の適時打)「チャンスでの代打だったので、積極的にスイングを仕掛けようと打席に入りました。追い込まれましたが、何とかしようという気持ちがタイムリーになってくれたと思います」

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