史上初の「伝統の一戦 ドラフト編」を制したのは、くじ11連敗中の巨人だった。「プロ野球ドラフト会議supported by リポビタンD」が20日、都内で開催された。巨人は公言通りに高校通算68本塁打の高松商・浅野翔吾外野手(3年)を指名。くじ引き史上初の「GT一騎打ち」となったが、原辰徳監督(64)が右手で、08年の大田泰示(現DeNA)以来となる当たりくじをゲット。歓喜の原監督は浅野と主砲岡本和との「高卒スラッガー クリーンアップ」の未来予想図を描いた。

 

封筒を手にする原監督の顔が、みるみる赤みを帯びていった。先に開封した隣の岡田監督から、喜びの声は聞こえない。興奮で、血がたぎる中、交渉権確定の文字を目にした。「いやいや自分がね、ジャイアンツに入った時のようなね、うん十年前のね、こんな感じなのかなと」。大きな目をさらに丸くさせ、力いっぱいのガッツポーズを繰り返した。「非常に不安の中でね、時を迎え、いい結果になったというのは、久々に歓喜という血が全身に沸いた感じがしました。自然の中で私自身の素が出たと思います」。抽選後に実施したリモート会見でも、顔は紅潮したままだった。

想いが通じた。浅野が出場した米国でのU18W杯にスカウトを派遣。9月28日のスカウト会議後、熱意を伝えるのと他球団をけん制すべく、12球団最速で1位指名を公表。大塚副代表は「将来スーパースターになるような素材」と絶賛した。原監督も「近未来という点においては、とっても楽しみな選手」と高評価。くじ引き11連敗中だったが、スピード公表は競合辞さずの覚悟の現れだった。

運命の糸を、なりふり構わずたぐり寄せた。くじ通算1勝11敗の指揮官は、会場までの道順を変更し、靴も新調。「もう1ついうと、ネクタイもスーツも、ということですね」と笑って加えた。あの手この手で負の流れを断ち切り、岡田新監督との「伝統の一戦 ドラフト編」を制した。「こういう戦いというのは、あまり気持ちいいものではありません。周りの方、全ての方に感謝したいと、そういうふうに思います」と相手の心中をおもんぱかり、感謝の言葉を並べた。

高校生のドラ1野手は岡本和以来。外野手では球団初となる。走攻守にパンチ力、そして野球に取り組む姿勢も評価した指揮官は「期待をかけすぎるとね。和真もやや時間がかかっておりますし、松井(秀喜)も少々時間を有したこともある」と前置きしたうえで「岡本、浅野というクリーンアップが打てるようになれば一番いいと思います」と目尻を下げた。「私自身も興奮していますしね、浅野君も私と同じくらい興奮してくれていると思います。近々未来、ジャイアンツを担う選手になってくれると思っているし、我々も全力で彼をサポートし、育てるという決意をさらに強めております」。2年連続V逸の巨人復活へ、これ以上ない最強のピースが加わることになる。【浜本卓也】

▽巨人原監督 今日は本当に100点ですね。(浅野は)3拍子、4拍子そろったね、大きなスケール感のある選手になってほしい。浅野君はちょっと時間がかかるかもしれませんが、あとは即戦力でプレーできる選手と思っている。投手2人、野手3人、外野、外野、内野と、もう完璧。思い描いた、ミーティングしていた通りのメンバーで指名することができたと思う。

◆原監督と岡田監督 原監督は58年7月22日、岡田監督は57年11月25日生まれで岡田監督が1学年上。79年の日米大学野球では、東海大・原が3番サード、早大・岡田が4番ショートで出場していた。ドラフトは岡田が79年1位(6球団競合)で阪神、原が80年1位(4球団競合)で巨人に入団。ともに新人王。監督では原監督が巨人、岡田監督が阪神で06~08年の3年間、セ・リーグで同時期に対戦。07、08年は巨人が優勝した。

 

○…5位西濃運輸・船迫投手 最速151キロのサイドスロー右腕は今季、新人歴代最多タイの37セーブを挙げた大勢に肩を並べる気概だ。「自分は中継ぎだと思う。大勢選手に負けない投手になりたい。社会人4年目。負けたくない」。宮城県出身で、幼少期から巨人ファン。エース上原浩治に憧れ、マネをした。「巨人の投手陣は分厚い印象。チームに貢献したい」。切れ味鋭いスライダーが武器で即戦力として期待大だ。