ダイヤモンドを回りながら、ヤクルト塩見泰隆外野手(29)は内心にんまりしていた。「もう、ほぼほぼ僕がヒーローだな」。2-2の3回先頭、オリックス山本からバックスクリーン左横へ決勝ソロを放った。カウント1-2と追い込まれていたが「力負けしないように」という心掛け通り、パワフルなスイングだった。両チーム通じてシリーズ1号は、山本にとってポストシーズン初被弾。やはり、リードオフマンが難敵攻略のカギだった。

心掛けを守ったのは初回先頭からだ。初球155キロを左前へ運び、二盗も決め、先制ホームを踏んだ。CS前、短期決戦の心掛けを「本当に入りだと思う。シーズンと違って長い期間じゃないので、1打席1打席が大事になる。初球、1打席目、1つ目のフライを捕る。そういう『1』が大事になってくる」と話した。言葉どおり、シリーズ第1戦、第1打席、第1球の甘い球を見逃さなかった。

パの4冠投手を、どう崩すか。高津監督は「仕掛けていかないと。簡単に四球を出すピッチャーでもない。積極性だけは失わず、打ちやすい球を打つ」とシンプルに説いた。だから、塩見の第1打席を「チームが勢いをもらった」とたたえた。決勝ソロはもちろん価値があるが、チーム最初の一振りが、山本の5回途中降板につながった。

オスナに続き、お立ち台に上がった塩見は「明日はオスナより、もっと輝いて、僕が確実に1位になれるように頑張っていきます」と宣言した。昨年のCSファイナルステージでは打率4割、4打点ながら、MVPは奥川だった。選ばれる気満々だった塩見は、アナウンスの瞬間、グラウンドで大きくずっこけ、チームメートたちも大笑い。今年のCSのMVPはオスナだった。日本シリーズこそ。2年分の思いも込めて、あと3勝し、1位(MVP)になる。【古川真弥】

◆塩見とフェラーリ(跳ね馬)のポーズ 昨季から得点時にハイタッチの代わりに行っているもので、両拳を掲げ、立ち上がる馬のようなポーズをする。シーズン序盤に塩見が始めて浸透。首脳陣も含め全員でやるのがお決まりだ。塩見は「僕はフェラーリだと思っているんですけど(川端)慎吾さんはナポレオンだと。馬ポーズでもありますし…」と話しており、名称は未確定だ。また本拠地神宮での第1打席時の登場曲は「関東G1ファンファーレ」を使用し、スタンドもノリノリになる。