オリックス山本由伸投手(24)がいきなりアクシデントに見舞われた。日本シリーズ第1戦に先発。しかし序盤からヤクルト打線につかまり、5回先頭の代打キブレハンに3球目を投じた直後「左脇腹がつったような感覚」を訴えて緊急降板した。5回途中4失点で、3試合目のシリーズ先発も初白星はつかめなかった。2年連続で勝利数、防御率、勝率、奪三振のパ・リーグ投手4冠に輝いた絶対的エースにとって、ほろ苦いシリーズ開幕となった。

    ◇    ◇    ◇  

難攻不落のエースに、アクシデントが発生した。5回先頭のキブレハンへの3球目を投げ終えると、山本が三塁側ベンチに「サイン」を送った。トレーナーが駆け付け、うつむきながら、マウンドを降りた。そのまま中嶋監督が投手交代を告げる。5回途中64球で緊急降板。敵地神宮に暗雲が垂れこめた。球団発表は「左脇腹をつったような感覚を訴えたため、大事を取っての途中交代」。試合途中にベンチに戻り、ナインを鼓舞する姿が見られた。

「こういった大事な試合でこんなことになってしまうのは最悪だなと思います。(違和感に)ちょっと早めに気づけたのだけ良かった」

幸いにも重傷には至ってないようで「大丈夫です。様子を見ながら相談しながら」と次戦を見据えた。

神宮では初先発。4年前の18年に1度リリーフで立ったことがあるだけで、慣れないマウンドが気になった。初回にオスナに三塁線ギリギリを抜かれる適時打を打たれ、いきなり2失点。「思ったところに、投げられなかった。反省はすごく多いです」、3回には塩見にポストシーズン初被弾となる勝ち越しソロを浴び、4回にはオスナにも左翼席に放り込まれた。今季初の1試合2被弾…。NPB史上初の2年連続「投手4冠」を獲得した圧倒的な投球は見せられなかった。

ヤクルト打線について「12球団の中でもトップレベル」と語ってきたが、この日は自身との闘いでもあった。左手グラブが、いつもの位置になかった。思わしくなかった患部の状態をかばう投球フォームになり、強いボールを繰り出すことができなかった。中嶋監督は「異常があったのですから、それ以上、詳しいことを言う必要あります? 僕も分かりません」と多くは語らなかった。

まだシリーズは始まったばかり。回復さえすれば、リベンジのチャンスはある。シーズンで大奮闘してきたエースの復調を、祈るしかない。【真柴健】

▼オリックス山本がポストシーズン通算5試合目で初黒星(2勝1敗)。ポストシーズンで初めて本塁打を許し、1試合2失点以上も初めてとなった。山本の1試合被本塁打2本は公式戦を通じて4度目の自己最多タイ。これまでは18年8月9日西武戦(山川、中村)、19年6月18日巨人戦(丸、岡本)、20年8月11日ソフトバンク戦(中村晃、柳田)で記録している。

◆中嶋監督が勝利へ執念の采配を見せた。2点ビハインドの7回に、勝利の方程式の一角の阿部を4番手で投入した。阿部は2死から連打で一、三塁のピンチを迎えたが、山田を空振り三振に仕留めて切り抜けた。緊張の日本シリーズ初登板だったが、無失点で終えて指揮官の期待に応えた。

◆第2戦は“二刀流”の山崎福が先発する。9月20日以来の登板。明大で神宮経験豊富な左腕は「日本シリーズで投げられるので楽しみながら投げたい。今年の交流戦では打撃があった方がリズムがよかった気がします」。交流戦は東京ドームと横浜スタジアムで連勝。安打もマークした。日大三3年春には甲子園最多記録に並ぶ1大会13安打を放った打力にも期待がかかる。