オリックスが3連勝で26年ぶりの日本一に王手をかけた。「SMBC日本シリーズ2022」の第6戦。6回に杉本裕太郎外野手(31)がヤクルト小川から先制適時打を放ち、これが決勝打となった。阪神の岡田新監督がオリックス監督時代に優勝の代わりに用いたフレーズ「アレ」が再注目される中、杉本は円陣の声出しで拝借していた。これで3勝2敗1分け。第7戦で一気にアレを決める。

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グッと握った拳から、ピースサインが飛び出した。6回2死一、二塁から決勝となる先制打を放った杉本は、一塁ベース上で「昇天ポーズ」を披露。直後、拳から2本指を三塁側ベンチに突き出した。

「あの場面、自分で勝負してくると思っていた。日本一のバッターの後ろなので、仕方ない。ある程度、心の準備はできていたので落ち着いて打席に入れた」

目前で吉田正が申告敬遠されても意に介さない。「中嶋監督が正尚の後で僕を使ってくれている以上は、そういうこと」。ヤクルト小川の4球目、内角142キロ直球を右へ。一、二塁間に打球が抜けると神宮が熱狂に包まれた。

流行に敏感な杉本は、試合前の円陣で「秘策」を用意していた。声出し役を務め「あと2勝で“アレ”なんで、みんなで御堂筋でパレードしましょう!」。アレ…とは。「岡田監督のまねしました」とニヤリ。阪神の岡田新監督が優勝を過剰に意識させないため、言い換えたもの。元はオリックス監督時代の10年交流戦で使い始め「アレしてもうた」Tシャツが発売されたほどのパワーワードだ。時事ネタも、吉田正の後ろも、お得意さまだった。

打席で真剣表情を貫く中、日本シリーズ直前にビックリニュースが飛び込んだ。15日深夜放送のMBSラジオ「ヤングタウン土曜日」で明石家さんまが、ラオウに言及。伝え聞いた杉本は「俺の方が心躍ったよ。さんまさんに知ってもらえとるってだけで、うれしすぎちゃう?」と相好を崩した。「踊る!さんま御殿!!」などが好きで「いつも司会役。ずっとしゃべってるの本当にすごい」と尊敬する。さんまの本名は杉本高文。「それまで名字は知らなかった」と言うが、同じ杉本姓にシンパシーを感じ「僕もラオウで浸透しているはず」と誇らしげだ。

3連勝で26年ぶりの日本一に王手。中嶋監督はラオウ杉本に「もっと打って」とハッパをかけ「プレッシャーはかかるけど打てば点が入る。もしかしたら、そこがポイント」と期待をかけた。杉本も分かっている。「手の届く位置まで日本一が来ている。ここまで来たら気持ちの戦い。僕の場合は謙虚にならず、どんどん攻めていけたら」と熱い。昇天のグー、うれしさのピースの次は歓喜のパー。思い切り両手を広げて、万歳する。【真柴健】

▼杉本が<4>戦に次いで今シリーズ2本目のV打を放った。この日は6回2死二塁から4番吉田正が申告敬遠された直後の先制打。シリーズで前打者が敬遠直後にV打を放ったのは13年<4>戦寺内(巨人)以来だが、オリックスではヤクルトと対戦した阪急時代の78年<6>戦島谷以来、44年ぶり。78年<6>戦は3回2死二、三塁で4番マルカーノが敬遠され、5番島谷が先制の内野安打を放って勝った。

○…太田が決勝のホームを踏んだ。第4、5戦で先発出場し、ともに安打を放った好調さを買われ、「1番一塁」で起用された。1回に中前打を放ち、6回も先頭打者で左前打でチャンスメーク。2死一、二塁から杉本の右前打で二塁から生還した。9回にも四球を選び、5打席で3出塁と期待に応えた。中嶋監督は「ああいうところで臆することなく振っていけるというのがチームに勢いをつけてくれるので、いいと思いますよ」とたたえた。

○…ドラフト2位ルーキー野口が、日本シリーズ初出場初打席で安打を放った。7回1死で、宇田川の代打で登場。カウント2-1からヤクルト木沢の4球目をセンターへ運んだ。公式戦では54試合に出場したが、CSファイナルSは出番がなく、今シリーズは6戦目にして初めてのベンチ入りだった。巡ってきたチャンスを確実にモノにした。

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