侍ジャパンのリードオフマン候補となっている近本光司外野手(27)が5日、23年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)選出へ強烈アピールを決めた。「侍ジャパンシリーズ2022」が開幕し、日本ハム戦(東京ドーム)で代表デビュー。「1番中堅」で先発すると、初回に初安打初盗塁初得点を決め、栗山英樹監督(61)の初対外試合を勝利に導いた。3大会ぶりの世界一へ、「スピード」を重視する栗山野球をいきなり体現した。

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東京ドームに乾いた打球音が響く。場内の拍手で、その余韻はすぐに消えた。初回先頭。近本は侍デビュー戦でも極めてアグレッシブだった。

「栗山監督に『ガンガンいけ』と言われていたので、思い切って打ちにいくことを考えてました」

10月14日ヤクルト戦以来、22日ぶりの実戦。数球見れば、すぐに感覚を思い出した。3ボール1ストライクから日本ハム上沢の147キロを強打。ライナーで右前打を決めた。

見せ場はここからだ。間髪入れず、次打者への初球からスタートを切った。二盗成功後、捕手の送球が乱れる間に三進。グリーンライト(走者が自由に盗塁を判断する権利)を与えていた栗山監督の期待通り、いや、それ以上の足攻だ。

「自分がやることを100%に近い形でできた。足も絡めて点を取れたというのは良かったんじゃないですかね」

その後、近藤の左犠飛で生還。栗山ジャパン初安打初盗塁初得点を生み出し、納得顔だ。

栗山監督は今年2月の春季キャンプから近本に熱視線を送ってきた。1点が勝敗を分ける国際舞台。1人で局面を打開できるスピードにほれ込む。「思い切りいけと言っても、一発で、というのは難しい中で、攻める気持ちを見せてくれたのはすごく大きい」。賛辞の言葉は止まらなかった。

「スピード」の重要性を語ってきた指揮官にとって、近本は重要なピースの1人であることに違いない。同じ俊足強打の「1番中堅」候補には塩見もいるが、栗山ジャパン初陣でスタメンに抜てきされ、しかも先制パンチを食らわせた事実は大きい。

東京五輪組を含めたサバイバルにも、静かに闘志を燃やす。

「誰と争うかというよりは、今できる自分のプレーを100%できるように頑張るだけ。日本の代表としてユニホームを着ているので、将来の野球界のために、何か1つでもできることをやっていきたい」

23年3月WBCまで4カ月。「侍の切り込み隊長・近本」をたった1試合で深く印象づけた。【中野椋】

○…佐藤輝はホロ苦い侍ジャパンデビューとなった。「7番右翼」でスタメン出場。2回先頭で遊飛に倒れると、その後も見逃し三振、一ゴロと快音は響かず。牧、森、村上と3本塁打のアーチ攻勢に参戦できなかった。試合前は三塁でノックを受け、シートノックでは右翼に加え、一塁で内野陣の送球を受けた。内外野の準備を徹底し、次の出番を待つ。

○…中野が今年初の二塁守備に就いた。「9番二塁」で侍デビュー。昨年5月19日以来のポジションで3度の守備機会をこなした。栗山監督は「スピードを生かせる選手がほしい。中野には悪いんだけど、慣れないポジションで頑張ってくれた」と感謝。阪神岡田監督は来季の「二塁中野」構想も視野に入れており、本人も「(遊撃と)両方完璧にできるように」と意欲を示している。

○…湯浅は6日の巨人戦(東京ドーム)に登板する見込みだ。この日の試合前は高橋奎とキャッチボールし、ダッシュなどで調整。9回に同学年の大勢が登板する際には、ブルペンでドリンクを手渡しマウンドへ送り込んだ。侍ジャパンの守護神候補の1人でもある右腕。日の丸デビュー戦でも堂々と腕を振る。

◆WBCの外野争い 今回の強化試合には外野手6人が選出された。中堅にはともに俊足強打の近本、塩見。左翼は近藤、西川が守る。佐藤輝、周東は内外野をこなす。本番でもユーティリティー枠は貴重な存在になりそうだ。東京五輪組のカブス鈴木、オリックス吉田正、ソフトバンク柳田も実績十分。吉田正はポスティングシステムでのメジャー移籍を希望しており、その動き次第か。鈴木は、球団が出場を容認済みだ。21年東京五輪は外野手5人だった。二刀流の大谷(エンゼルス)も含め、限られた枠を高いレベルで争う。

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