来春ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向けた強化試合「侍ジャパンシリーズ2022」の4試合が10日、終了した。栗山英樹監督(61)初の対外試合は4連勝。阪神からは湯浅京己投手(23)、中野拓夢内野手(26)、佐藤輝明内野手(23)、近本光司外野手(28)が、いずれも初選出され、アピールを重ねた。各選手の4試合を総括する。【阪神担当 中野椋】

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【湯浅】2試合計2イニングを無失点。6日巨人戦の7回に3番手で登板し1イニングを1奪三振、3者凡退に抑えた一方、10日のオーストラリア戦は制球に苦しんだ。ゼロ封も1安打を浴び、1四球。本人も「感覚的には今年一番だめ」と振り返るほどだった。大会公式球には順応しつつあるが、課題も残ったといっていい。

21年東京五輪では自チームで「リリーフ専属」の投手は広島栗林、西武平良のみ。球数制限のある中、栗山監督は「第2先発」を重要視しており、セットアッパー、守護神は2~3枠の争いになるとみられる。栗林、平良の東京五輪組に加え、今シリーズに選出された巨人大勢、オリックス山崎颯、広島森浦らが強力なライバルとなりそうだ。

【中野】 4試合に出場、そのうち3試合はスタメンで計7打数1安打2打点だった。5日の日本ハム戦は「9番二塁」、6日巨人戦は「9番遊撃」、10日オーストラリア戦は「8番遊撃」で先発。9日オーストラリア戦も二塁守備から途中出場した。それまで無安打で迎えた10日、最後のオーストラリア戦で3打数1安打2打点。満塁機で押し出し四球を選び、好機では犠飛を放つなど打点も稼ぎ、意地を見せた。

スタメン遊撃は西武源田で固く、二塁もヤクルト山田、DeNA牧が打撃でアピール。WBC本番へ向けては「二遊間のバックアップメンバー」が必要とされるが、球界全体を見渡しても二遊間を一定レベルで守れる存在は貴重だ。栗山監督も「中野の二塁は大丈夫そう」と複数ポジションをこなせる守備力を評価。中野にはさらに足もある。バットでのアピールは物足りなかったが、足と守りではアピールに成功したといっていい。今後は12日から高知・安芸キャンプに合流する見込みだ。

【佐藤輝】 4試合に出場、そのうち3試合でスタメンだった。計13打数2安打、2打点。5、6日は「7番右翼」、9日は「8番右翼」だった。最終10日のオーストラリア戦では三塁守備から途中出場。内外野守れる貴重な存在として、存在感を示した一方、打撃で爆発的なアピールには至らなかった。

今回招集されたメンバーで、自チームでも主に右翼を守るのは佐藤輝のみだったが、21年東京五輪ではカブス鈴木が右翼で不動だった。東京五輪組の外野手は他にオリックス吉田正、ソフトバンク柳田がいる。吉田正はポスティングシステムを利用しての大リーグ移籍を目指しており、その状況次第か。今シリーズ参加メンバーを見ても、阪神近本、ヤクルト塩見、日本ハム近藤、広島西川、そして代走枠の周東がいる。ここに国際舞台で実績のある「強打の外野手」たちが加わわれば、全ポジションで最もハイレベルな争いになることが予想される。今後は中野同様、12日から高知・安芸キャンプに合流する見込みだ。

【近本】 2試合で「1番中堅」でスタメン出場。最終10日のオーストラリア戦では「2番左翼」もテストされた。5日巨人戦は初回先頭で初安打。直後に二盗を決めると、相手ミスに乗じて三進。近藤の犠飛で栗山ジャパン初得点を生んだ。9日オーストラリア戦でも2点打を放つなど、存在感を発揮。10日の同戦では2番で二塁打を放った。初の侍ジャパンで「スピード」を重要視する栗山野球を体現してみせた。

俊足強打の「1番中堅」にはヤクルト塩見がおり、本戦のメンバー選考では最大のライバルになりそう。一方で、左翼守備に柔軟に対応したことで塩見との“共存”も可能になった。その場合、2番打者として長打もあり、足も使える。1番塩見が凡退した後の「1死走者なし」の場面でも、1人でチャンスメークできる力を持つ。佐藤輝と同様、東京五輪組との激しい争いが待っているが、短い期間で栗山野球にフィットしたことは大きな事実だろう。