ロッテ中村奨吾内野手(30)が19日、球団と4年間の長期契約を結んだ。

今季中に国内FA(フリーエージェント)権を取得していた。不動の二塁手、安心の中軸、欠かせない戦力。得た権利を行使し、チームを離れるという選択肢はあったのだろうか。会見で、茶色のネクタイに手をやりながら「うーん、離れるというか、そうですね…」と言葉を慎重に選びながら話し始めた。

「マリーンズじゃないチームの野球、というか…を、見てみたい気持ちがないことはなかったですけど」

ロッテ残留以外の選択肢が脳裏にあったことを決して否定はせず、続けた。

「そうですね…、縁があってこの千葉ロッテマリーンズに入団させていただいて、今年で8シーズンが終わったんですけど。優勝、まだ一度も経験できていないですし、まだ球団に恩返しができていないのかなという思いも強かったですし。本部長と話し合いをさせていただく中で、このチームで優勝したいというものがより強くなったので、FA宣言するという選択には至らなかったかなと思います」

残留を発表した時も、松本尚樹球団本部長(52)からの熱い言葉があったと明かしていた。松本本部長は14年秋、中村奨がドラフト1位指名された時は編成統括職を務めていた。

「入団にも関わっていただきましたし。そういう本部長からの『もっと中心として頑張ってほしい』『中心として引っ張っていってほしい』という思いだったり『このチームで奨吾と一緒に奨吾と優勝したい』という思いを、強く熱くおっしゃっていただいたので。その思いが一番動いた、響いたかなと思います」

そうして決意し、長期契約を結んだ。マリーンズじゃないチームの野球、よりもマリーンズを選んだ。リーダーから見て、マリーンズはどんな野球のチームなのだろう。尋ねた。

「…ちょっと難しいですね。どんな野球に見えますか?」

こちらの目を凝視しての、キャプテンの不意打ち。逆に尋ねられた。

「個々の力を束にして、強くして、全員で戦っていくような…」

ラリーが続く。

「そうですね。選手自体の戦い方としてはそうだと思うんですけど」

そう言って続けた。

「いろいろな、何と言うんですかね、組織というかチームの作り方というか、そういうのも興味がないことはなかったかなとは」

数度に及ぶ松本本部長との話し合いは、自身の来季からの契約条件面よりも、それ以外の話に多くの時間を割いたという。「言えない話は多いんですけど」と苦笑いした。

キャプテン役での2年目を終えた。この交渉は、集めた仲間の声を球団に渡す席でもあった。

「プレー中にこういうのは困るとか、ベンチ裏にこういうものがあったらいいなとか。西日がやっぱりまぶしいとか。(右翼席上部に)小窓みたいなの、あるじゃないですか。そこに垂れ幕とかカーテンみたいなものを付けていただいたら、少しは(球が)見やすくなるんですけどどうですか、とか。小さいことで言えばそんなことです」

その上で結んだ契約は年俸額が非公表であっても、4年契約というだけで思いが雄弁だ。ロッテで勝つ。常勝軍団になる。自分もさらに上を目指す。

「全試合出て、なるべく他の選手をセカンドでは守らせないようにというのをやっていきたいなと」

来年も再来年もその先も、背番号8のリーダーがいる。【金子真仁】