交通事故のため、10日夜に55歳で亡くなった元プロ野球投手・入来智さんの通夜が12日、宮崎・都城市の平成会館で営まれた。実弟のオリックス入来祐作投手コーチ(50)は、大粒の涙を流しながら思いを激白。「破天荒な人でした。僕はコーチとして野球に携わっていますが、兄貴以上に破天荒な人はいないので、どんな人がきても大丈夫なんです。兄貴のおかげでね、どんな人とも付き合える」。2年に1回は「取っ組み合いのけんかをしていた」ほど、いくつになっても本音でぶつかる間柄だった。

プロ球界では「入来兄弟」として話題を呼んだ。最も印象に残っているのは、01年の球宴だという。智さんは、先発した祐作さんに次ぐ2番手で登板し、球宴史上初の兄弟リレーとなった。「兄貴が(99年に)ジャイアンツに入ってきて、『一緒に兄弟リレーがしたいな』と思ってたけど、かなわず。兄貴が(01年に)ヤクルトに行って、『兄弟対決がしたいな』という思いもかなわずでしたので。オールスターでバトンを渡せた時は、照れくさかったですけど、うれしかったです」。何度も言葉を詰まらせた。

キャンプイン前日の1月31日は、母の命日だった。祐作さんが墓参りを済ませると、実家には父の喜門さん(87)と元気な智さんがいた。「いつもと一緒なんですが、2人で口げんかしながら楽しそうにやっていた。安心して(オリックスの)キャンプ地に戻ったんですけどね…」。祐作さんが「おやじのこと、頼むぞ」と伝えると「分かっとるわ!」と返された。喜門さんは1人暮らしとなるだけに「父が心配です」と87歳の喪主を思い、声を振り絞った。

幼少期の智さんは、細いブロック塀の上でダッシュできるほど身体能力が抜群だった。祐作さんは「派手な死に方してしまって…兄貴らしいな」と雨の夜空を見上げた。葬儀・告別式は13日午前11時から、同所で営まれる。【只松憲】

○…入来智さんの通夜には、ともに宮崎市内でキャンプ中のオリックス福良GMや巨人久保巡回投手コーチらが弔問に訪れた。供花もヤクルト高津監督、オリックス中嶋監督、巨人桑田ファーム総監督や元オリックス清原和博氏(55)ら球界関係者から数多く寄せられた。祐作さんは「本当は(通夜や葬儀は)こっそりやろうと思いましたが、兄貴の性格を考えると、盛大にやってあげたほうがいいかなと。兄貴も喜んでいると思います」と明かした。

▽ヤクルト古田臨時コーチ(入来さんの訃報に)「思い出は01年。非常にバッターに向かっていく投手だった。日本シリーズまで投げ(日本一は)彼のおかげだったと思う」

▽ヤクルト真中臨時コーチ(入来さんの訃報に)「2001年は入来さんの活躍で勝てたシーズンだった。さみしいです」