ソフトバンクが17年から7年連続で開幕戦白星を手にした。先発の大関友久投手(25)が、7回2安打無失点の快投。育成出身の左腕では史上初となる開幕戦の勝利投手に輝いた。昨年8月に左精巣がんの疑いのため手術を受けた苦労人が、初の大役を全う。3年ぶりのリーグ優勝に向けて、藤本ホークスが快勝で船出を飾った。

苦労人が開幕戦で笑った。大関はお立ち台で一言。「すごく気持ちいいです」。無数のフラッシュライトを浴び、ペイペイドームにイケメン低音ボイスを響かせた。育成出身の左腕が開幕星は球界史上初。「そうなんですか? うれしいです」。大役を全うし、短い言葉に感情を込めた。

初の開幕投手とは思えない快投だった。立ち上がりの1、2回は3者凡退。3回は田村、藤岡、藤原を3者連続三振に仕留めて波に乗った。6回1死まで完全投球。「1球目を投げる時にはすごくワクワクできた。やっと投げられるなと。序盤から飛ばして1個1個抑えにいきました」。7回96球を投げ、2安打無失点7奪三振と完璧だった。

4年目左腕は19年の育成ドラフト2位で入団し21年5月に支配下登録を勝ち取った。昨年8月には左精巣がんの疑いで左睾丸(こうがん)の摘出手術を受けた。1軍マウンドから2カ月も遠ざかったが「必ず戻ってくる」と誓い完全復活した過去がある。

22年12月には自動車免許取得のため、熊本で行われた免許合宿に参加した。合宿所には「空き時間に練習をさせて欲しいのですが」と異例の申し出。承諾を受けて昼間はハンドルを握り、夜は白球を握った。免許を取得しても、ペイペイドームには変わらず自転車で通勤する。謙虚な姿もまた、大関らしい。

人目につかない努力が報われた。藤本監督は「7回まで投げてくれたのは大きかったですね」とうなずく。就任1年目だった昨季は、優勝マジック「1」としながらシーズン最終ロッテ戦に惜敗。オリックスに逆転優勝を許した。屈辱を晴らすための今季。まずは大関が開幕1勝を呼んだ。指揮官は「開幕ダッシュへの1勝。本当に大きいと思います」。タカの逆襲が幕を開けた。【只松憲】

◆ソフトバンク・オスナ(9回に移籍後初登板で1回無失点)「開幕戦はどんな試合でも大事なので、少しアドレナリンを感じました。(セーブの付かない4点差で)自分から志願して行かせてもらった。開幕戦を勝って終わるのは大事だし、チームのために投げたかった」