世界一の侍ジャパン投手陣最速で今季1勝をマークした。巨人戸郷翔征投手(23)がエンゼルス大谷よりも、パドレス・ダルビッシュよりも、先に今季初勝利をつかんだ。DeNA戦で今季初先発し、6回5安打無失点の好投。歓喜に沸いたWBC決勝から中12日で、帰国後は実戦なしの“ぶっつけ登板”で臨んだ。要所を締めて危なげなく、100球ちょうどでまとめ、23回目の誕生日を過ごした。

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戸郷が1日遅れの“戸郷家記念日”を粘りの投球で飾った。4日は23歳の誕生日だった。でも、実家で過ごした中学卒業までの誕生日会は決まって前日3日だった。父健治さんが2日生まれのため、2人の間をとって3日に一緒にお祝いするのが慣例だった。

幼少期から誕生日プレゼントは決まって「釣り道具」が定番。例外として小学生時代にもらった思い出深いプレゼントがある。投手一筋…ではなく捕手が主戦だった小学1年のときだった。チームで共有のミットでは満足出来ず、どうしても自分のキャッチャーミットがほしいと両親におねだりした。

1年間は我慢した。小学2年、8歳の誕生日に買ってもらった。健治さんが小遣いから“自腹”を切り崩してくれた。戸郷は「野球の原点はお父さん。野球を始めたきっかけなので、でかい存在です」と今でも忘れない父からもらったミットは小学校を卒業するまで大事に使った。

母ヒトミさんから「新しいの買ってあげるよ」と言われても「いいよ。これ使えるから」と譲らなかった。毎日練習後は油を塗って磨いた。夢へとつないだ大事なキャッチャーミットは、今でも両親のもとで保管されている。

今はマウンドが主戦場になった。WBCでは世界一を決める決勝戦に救援登板。強打トラウトからも空振り三振を奪った。この日は、米マイアミでの歓喜から中12日でぶっつけ登板。世界一のメンバーに堂々と名を連ね、巨人では投手キャプテンを張る。今季初登板は本調子ではなかったが、要所を締める大人の投球で6回無失点にまとめ「誕生日をみんなから祝ってもらえてうれしかった」とかみしめた。釣りと寝ることが大好きな戸郷がまた1つ、大人になった。【小早川宗一郎】

▼巨人原監督(今季初登板初勝利の戸郷に)「ぶっつけ、まあ、任せましたから。自分の中ではちゃんと調整してくれたと思います」

◆巨人投手のバースデー勝利 18年7月11日の山口俊以来で、6月9日生まれの高橋一は70、73年、4月29日生まれの内海は05、12年と2勝した。ほかに50年5月18日の藤本、52年10月1日の別所、82年5月25日の江川、93年8月11日の槙原、03年4月1日の桑田など、シーズン中に誕生日を迎えたエース級はバースデー勝利を記録している。

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