巨人梶谷隆幸外野手(34)が先制打を放った。1回1死三塁、阪神西勇の外角141キロシュートキロを左前にはじきかえした。カウント3-0から迷いなく振った。「チャンスだったので、積極的にいこうと思って打席に入りました。狙い球を思い切って打ちにいけました」。一塁ベース上で、手をたたいた。

暗闇の中にいた。DeNAからFA加入1年目の21年10月、腰椎椎間板ヘルニアの手術を受け、昨年5月には左膝内側半月板縫合手術を受けた。思うように体が動かない。「野球選手じゃないんじゃないか」と漏らすほど不安にもかられた。今季は育成契約から再出発。再発の不安と闘いながら、もがいてきた。初めてスライディングの練習をしたのは3月4日。怖さを封じ込めながら、寝転ぶようにゆっくり芝に滑り込んでいた。わずか5週間前だ。

この試合前までチーム5連敗。その間、計7得点とホームベースが遠かった。ここ5試合の得点圏打率は26打数2安打で打率0割7分7厘。計40安打ながら、あと1本が出ない展開で、黒星が続いた。3番に起用された梶谷は9日広島戦で無安打だったが、この日は1打席目から仕事を果たした。

長いリハビリを経て、輝く1軍の舞台に戻ってきた。まだ完璧とは言えないが、最前線で戦える喜びをかみしめる。「心は変わりましたね。野球めちゃ楽しいな」と笑う。今季初の伝統の一戦。はい上がった男は強かった。【上田悠太】