阪神新外国人のヨハン・ミエセス外野手(27)が虎デビュー戦で豪快弾&豪快キャッチを決め、チームを3連勝に導いた。「6番右翼」で1軍初昇格即スタメン出場した敵地広島戦。4回に激走で大飛球をもぎ取ると、6回は豪快な来日1号でダメ押しした。阪神助っ人のスタメンデビュー戦アーチは20年サンズ以来だ。チームは「5度目の正直」で今季最多の貯金5。懸案事項だった「6番右翼」に陽気なドミニカンがハマれば、2ゲーム差で追うDeNAの背中が近づく。

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広島の左翼西川は足を止めざるを得なかった。それほどミエセスが打ち上げた大飛球は速度、角度ともに完璧に近かった。

4点リードの6回1死。左腕塹江の141キロを強振し、左翼2階バルコニー席最深部にはずませた。あまりに豪快な来日1号だ。

「チームメートのみんなに祝福してもらえて、すごくうれしいよ。すごく興奮していますし、うれしい。こういう気持ちになったのも、すごく久しぶりだよ」

この日1軍に初昇格し、「6番右翼」で早速先発。阪神助っ人のデビュー戦アーチは20年サンズ以来の快挙だ。左翼スタンドで応援する虎党はもう大騒ぎ。岡田監督やナインも大喜びのままハイタッチでヒーローの帰還を出迎えた。

守備でもハッスルした。4点リードの4回裏1死。広島秋山の右中間への飛球に激走した。フェンス手前のウォーニングゾーンでグラブを伸ばしてランニングキャッチ。「しっかり集中して守備も取り組んでいたので良かった」と納得顔だ。

そんな懸命な姿に、岡田監督の目尻は下がりっぱなしだ。「やっぱり一生懸命するからチームにとっては絶対、雰囲気的にも良くなるよな、ああいうプレーするとな。あの1発は本人もうれしいやろうけど、チームにとっても大きい1発よな」と手放しでたたえた。

ヒーローインタビューでは記念球を贈る相手を静かに明かした。

「ドミニカに持って帰りたい。亡くなってしまった父にあげようかなと思う。きっと彼は天国で見てくれていたと思う。今日はうれしい気持ちだけど、心の中ではすごく寂しいところもあった。お父さんに届けたいなと思います」

家族の不幸で一時、ドミニカ共和国に帰国していた大砲。父との突然の別れ…。誰もがつらい時期を懸命に乗り越え、異国の地での本領発揮を目指す。

チームは3連勝。「5度目の正直」で貯金は今季最多の5に増やし、首位DeNAとのゲーム差も2に縮めた。「これからも全力でやりたい」と分厚い胸を張った背番号55。衝撃の1発が、虎をさらに加速させそうだ。【三宅ひとみ】

■阪神ミエセスのここまで

▼入団会見 1月26日に来日し、翌27日に球団事務所で入団会見。あだ名はチームメートから呼ばれた「ミエちゃん」に決定。

▼2月春季キャンプ 1軍スタートで、新助っ人として異例の先乗り合同自主トレから参戦。同7日には初実戦形式のシート打撃で桐敷から左越えの1発を披露。

▼実戦初アーチ 3月9日のオリックスとのオープン戦(京セラドーム大阪)で来日初本塁打を含む2安打4打点と大暴れも、開幕は2軍スタート。

▼一時帰国 4月9日に身内の不幸があった影響で、母国ドミニカ共和国に一時帰国。25日に再来日し、2軍本体に合流。

▼2軍公式戦1号 5月2日の2軍ソフトバンク戦(タマスタ筑後)で8回1死から左越えの1発を記録。

◆ヨハン・ミエセス 1995年7月13日生まれ、ドミニカ共和国出身。13年からドジャース傘下のマイナーでプレー。18年にはカージナルスへ移籍、19年に3A初出場。21、22年にはレッドソックス3Aでプレーし、メジャー経験はない。21年東京オリンピック(五輪)ではドミニカ共和国代表として銅メダル獲得。185センチ、120キロ。右投げ右打ち。