球団タイ記録の快挙は逃しても、勝利に値する快投だった。

開幕6戦6勝をかけたマウンドでも、阪神大竹耕太郎投手(27)は冷静だった。「それで気負っていいことは何もない。ただの1試合と思って投げた」。クイックを交えたテンポのいい投球で7回を6安打無失点。「ピンチとか関係なく、やるべきことを1球1球やるだけ。別にそのシチュエーションが10対0だろうが0対0だろうが、僕にとってあまり関係ない」。0-0の投手戦にも、心を乱さなかった。

3回にはプロ通算16打席目で初安打となる遊撃への内野安打も放った。対戦した広島森下は早大時代に2打席対戦し、左中間への二塁打を記録。「森下君の軌道は知っているので」とイメージしていた。一方で昨季11安打の「打者森下」の怖さも熟知。7回最後の打者として対戦し、「あそこに飛ぶのが最大限になるようなコースに投げきれた。狙って抑えられた感じ」と二ゴロに仕留めた。広島とは今季3度目の対戦。岡田監督は「初回からすごく粘られたり研究をしてると思うんだけど、ランナーを出してもうまく0点に抑えていく。さすがですね」とたたえた。

好調左腕はオフも無駄にしない。前回登板後の休日にはリラックス効果のあるとされる呼吸法のトレーニングを学びに京都へ足を運んだ。道中ではトンカツや大好物のギョーザ、スイーツも堪能。現役ドラフトでソフトバンクから移籍し、福岡から関西へと生活拠点を移した。新たな土地の魅力を満喫し、エネルギーに変えている。

大竹に勝敗はつかなかったが、チームは劇的なサヨナラ勝ち。ベンチ裏でインナーマッスルのトレーニング中だったが、「絶対、水をかけるのはやりたかった。森下が打席に行ったくらいから準備を始めて。念願の水掛けができました」と歓喜の輪へ。昨オフ最高の補強となった左腕がこの日も勝利を呼び込んだ。【波部俊之介】

▼阪神大竹は球団タイ記録の開幕6戦6勝とはならなかった。7回無失点で降板したが、味方の援護なく勝敗はつかず。球団記録の37年秋に御園生崇男が記録した6戦6勝に届かなかった。

○…2番手岩貞祐太投手が8回を3人で抑え、6ホールド目をマークした。1死から上本に四球を与えるが、3番秋山の強烈なライナーを一塁手大山が好捕。そのままベースに飛び込み、飛び出していた上本は戻れず併殺となった。「大竹があれだけいい投球をしていたので、抑えてよかった」と、笑顔。この日も熊本県人リレーを成功させた。

○…先発マスクの坂本誠志郎捕手が、3投手を導き、無失点でサヨナラ勝ちを演出した。今季6度目の先発大竹とのコンビではテンポを意識。「あんまり考えさせないうちに投げたいっていうのはある。大竹も捕ったらすぐ投げるみたいな感じで来てくれる」と意思疎通ができていた。初回は二盗を阻止し、打撃では2回に左中間への二塁打。攻守で存在感を示した。

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