ソフトバンク藤本博史監督(59)が本音でチームを語る企画「藤もと亭」。第2回のテーマは「大将の1日」です。就任2年目を迎えた監督の1日のスケジュールや、試合当日のスタメンを決めるコーチ会議について言及。リーグ優勝奪回を目指す指揮官の日常を深掘りしました。もちろん、30日の中日戦(ペイペイドーム)で開幕する交流戦にも気合十分。「最初から飛ばしていきたい」とロケットスタートも宣言しました。【取材・構成=只松憲】

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大将の朝は早い。

藤本監督 午後6時開始のナイターゲームなら、起きるのは朝7時やね。まずはシャワーを浴びてゆっくりした時間を過ごす。スポーツ新聞やヤフーニュースをチェックしたり。SNSはしてないです。自宅を出発するのが午前11時で、ペイペイドームに到着するのが11時20分ぐらいかな。ちなみにデーゲームなら朝5時に起きますよ。

本拠地ナイターの試合前練習は午後2時過ぎに開始する。

藤本監督 全体練習までは、当日の相手ピッチャーや相手バッターの調子をiPadで研究しています。その後にトレーナーからの報告や、コーチミーティング、打撃ミーティング、投手ミーティングがある。当然、投手ミーティングと打撃ミーティングは僕とやる前に選手とコーチの間でやってもらっています。監督とコーチの間でやるミーティングは、試合のシミュレーションや選手の起用法について話します。

いかにして当日の打順は決まるのか。

藤本監督 森ヘッドコーチ、吉本打撃コーチ、長谷川打撃コーチがそれぞれ打順の提案をしてくれる。その3つの中から最終的にヘッドコーチと2人で決める形やな。もちろん相性もあるし、今の選手たちの状態もある。さらに言えば状態の良い選手でも、トレーナーから「疲労がきているので休ませてください」と言われることもあるんです。だから移動ゲームの日は休ませてあげようかと、そういうのも考えている。それを踏まえてのオーダーを組んでいます。

だが、現実は理想通りにならない。

藤本監督 今年はうちの看板選手である柳田と近藤、中村晃、栗原の4人は1年間働いてもらわないと困る。4人に関しては休みはDHにはめようと思っている。状態が相当落ちない限りはね。バッティングの技術が落ちない限りはDHで休ませる。でも柳田はDHばっかりだとバッティングが悪くなると思うんですよ。やっぱり外野を守ってキレを出すとかね。そういうのも考えないといけない。いろいろとシミュレーションはしてるんですけど、なかなかそうはいかない。この前、元ロッテ監督の井口と話をしました。「シミュレーション通りにいかないね」って言ったら「期待通りにいかないのが野球ですよ」って言ってました。その通りやなと思う。期待が外れてしまうことが多いのが野球であって。でも、逆にいい期待外れもある。1年間いろんなことがあるんだと思います。

頭を悩ませた後は、選手が練習をしているグラウンドに向かう。

藤本監督 ビジターチームの練習が始まれば、ちょっと部屋で休憩します。30分ぐらいの仮眠。そういえば俺が現役時代に「試合中に将棋をうってた」とか言われてるけど、俺は試合中に将棋は打ってないよ(笑い)。無理でしょそんなの。試合中に将棋なんか一切打ってません。俺、弱いもん将棋。

試合が始まれば全集中。

藤本監督 試合が終わったらすぐに帰るようにしてる。俺が打撃コーチをやってた頃は、監督が帰るまでコーチは帰れない雰囲気とかあったからね。そう言われてたわけではないけどなんとなくあるでしょ。だから勝っても負けても僕は早く帰ります。試合が3時間やったら午後9時に終わって、10時過ぎかな。帰ったらご飯を食べます。妻はいつも何か作ってくれてね。お酒のあてがあれば満足です。就寝は12時前後。朝早く起きるから。朝の散歩は昔はしてたけど今はしてない。いろいろ考えることがあるじゃないですか。

休日はしばしの時間だけ、野球から離れる。

藤本監督 休みの日は家でぼーっとしてますよ。ネットフリックスで韓国ドラマを見たりしてね。今は何を見てたっけ…忘れたわ。なんか面白いやつ。朝起きてすぐは野球のことは考えないけど、寝る前はずっと考えるかな。遠征でも試合から宿舎に帰ったら、すぐにご飯を食べてベッドに横になる。

今季は3年ぶりのリーグ優勝奪回が宿命。大将の思う「監督業」とは。

藤本監督 勝てば選手のおかげ、負ければ監督が悪い。監督が全責任を負うということだと思います。

 

◆藤もと亭 98年の現役引退後に福岡市中央区平尾で開業した居酒屋。正式名称は「うまいもんや 藤もと亭」。藤本監督がオーナーを務め、新鮮な魚料理や野菜など季節にあわせたメニューが人気だった。「元プロ野球選手の気さくな店主がいる」と話題になり、多くの野球ファンが集った。11年からソフトバンクの2軍打撃コーチに就任するため、10年12月で閉業。

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