鹿屋体大(九州地区南部)が国立大として最多タイの1大会2勝目を挙げ、ベスト8に進出した。

快進撃を支える1人が入学したばかりのルーキーだ。「5番二塁」で先発した川瀬虎太朗内野手(1年=広陵)が8回、右中間に飛球を放つと外野手同士が交錯。ボールが転々と転がる間に川瀬は本塁を駆け抜けた。「大学1号」のランニング本塁打で4点差。ダメ押し点になった。

広陵(広島)の主将として21年の明治神宮大会で準優勝。昨年のセンバツにも出場した“エリート”だ。母子家庭の経済的な事情で、野球はやめるつもりだったが、広陵の中井哲之監督(60)に「もったいない。続けたい気持ちがあるなら続けなさい」と説得された。紹介されたのが日本唯一の国立体育大の鹿屋体大。広陵OBは過去にいないが恩師の後押しを受けて、鹿児島での勝負を決めた。

「チームで全国大会の経験があるのは自分だけ。雰囲気も分かるし、全国を目指すチームの中に自分が入って、どうやって伝えていこうかと考えている。責任感を持ってやっています」。1年生ながら自らの役割を胸に刻んでいる。

藤井雅文監督(34)も「こういった大きな場でも動じることがない。一番下の学年の子がどっしりしているので、先輩たちも大丈夫という気持ちになる。精神的な面で存在意義は大きいですね」と目を細める。

5番を務める川瀬は2回、3回も得点を導くつなぎの安打をマークした。打線にも欠かせない存在だ。「高校時代は打撃が課題でしたが、木製バットになっても対応できている。大学の施設でフォームを分析して、修正できているのが大きいです」。体育大ならではの好環境を活躍の理由に挙げた。【柏原誠】