元気にもほどがある。西武中村剛也内野手(40)が14号、15号と今季初の1試合2本塁打を放ち、日本ハムにかわって、チームを最下位から5位に導いた。40代選手の1試合2発は球団初。20代で234本塁打をかっ飛ばしたスラッガーは、30代以降で235本塁打に。若い自分を超えた。円熟味を増した技術は、後進たちのこの上ない手本になる。史上9人目の500本塁打到達まで残り31本。十分に見えてきた。

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花火を上げろ、中村-。神戸に駆けつけた左翼席の西武ファンがコールし、その中心に白球を落とした。「うまいこと当たってくれて入ったなという感じ」。4つの塁をじっくり踏む。4回、オリックス本田のフォークを運んだ。

前夜は獅子党をだいぶ疲れさせた。7回に代打で登場し、空振り三振。西武ファンは左翼席で左右に走る応援をし、その数30往復少々。駆け引きも多く、オリックス小木田との対決には7分弱を要した。

「7分!? えっ、まじ!? まじっすか!? そんなに長かったの?」

中村本人も目を丸くするほどだ。7分間たっていたことに驚くのは、それだけ打席で集中しているから。「準備、できてますから」とタイムもあまり取らず、次の球に集中する。本拠地ベルーナドームでは打席での虫払いが夏の風物詩。でも中村はそれをすることもほぼない。「白いのが飛んでる時、ありますけどね。高いところ飛んでても、気にならんでしょ」。

類いまれなる集中力も生かしながら20代で234発を放ち、30代と40代で235発。全盛期は一体いつなのか。8回、冬で41歳になるオリックス比嘉のカーブに動じなかった。「何となくカーブが来そうというのがあったので。何となくですよ」。読みが当たっても万人が左翼席中段まで運べる訳ではない。「技術は今が一番だと思います」と胸を張るだけあり、引き出しはハンパなく広い。

5回裏、球場外に本物の打ち上げ花火が彩った。「そこまでの感情はないっす。花火に関しては」と言いつつ、ベンチスタートの前夜は若手以上に前のめりになって神戸の夜空を眺めた。今日はスタメンだから集中、集中。打席で最高の花火を上げて「打てて良かったです!」といつもの元気な声を届けるまでが中村剛也。お立ち台で「また会いましょう」とファンにほほ笑んだ。【金子真仁】

▽西武松井監督(40歳中村の1試合2発に)「アーチストですからね。僕らじゃ計り知れない技術。読みもそうでしょうし、しっかりと1発で仕留める集中力と技術。見事だと思います」

▼40歳0カ月の中村が4回に14号、8回に15号。40代でマルチ本塁を記録したのは17年4月12日新井(広島)以来で、西武では初めて。中村のマルチ本塁打は通算44度目となり、8位の土井(西武)に並んだ。また、2本目は40歳8カ月の比嘉から。40代の打者が40代の投手から本塁打は、11年8月18日に金本(阪神)が豊田(広島)から打って以来、12年ぶり。過去に記録しているのは広沢(阪神)と金本だけで、パ・リーグでは初めてのケースだ。

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