阪神西勇輝投手(32)はゲームセットの瞬間、両手を突き上げた。散発2安打で今季初完封。自身2連勝で7勝目を挙げた。2時間6分は今季の両リーグ最速試合。チーム今季16度目のゼロ封勝ちで、1-0勝ちに限れば6度目だ。7連戦の頭を1人で投げ切り、優勝マジック3。全て先発投手が白星の9連勝は、球団55年ぶりの快挙となった。

「9回のマウンドに上がっている時、本当に歓声がすごくて泣きそうになりました」

虎党が背中を押してくれた。8回2死の打席で1度もバットを振ることなく見逃し三振。ベンチに戻ると大きな拍手が起こり「西コール」が響いた。「拍手が背中から…体感したことない」と未体験の感覚に包まれ、最後までマウンドに立った。巨人打線に二塁すら踏ませず、13年連続となるシーズン100イニング投球に到達した。

まだシーズンが始まって間もない頃、鳴尾浜での残留練習で制球に悩む鈴木にキャッチボールのコツを聞かれた。説いたのはテンポとイメージの大切さ。「どこらへんに投げたら相手の胸にいくか考えながら、リズムよくした方が絶対によくなるよ」。後輩は今、2軍の先発ローテーションに定着。その一挙手一投足がお手本となっている。

打ち込まれる日々が続き、7月上旬から約1カ月半の2軍生活。今度は「後輩を応援したい」気持ちを打ち消した。「バチバチしながらという、自分の気持ちを取り戻すことができた。自分中心にもう1回頑張ろうと」。8月下旬に再昇格後は4戦2勝。頼れる背番号16が帰ってきた。

岡田監督は「今年一番のピッチング」と称賛。「(試合が)早いから延長なるでって言うとったんや」という指揮官の予想を右腕が覆してみせた。ローテーション通りなら19日火曜日は試合がないため、1度出場選手登録を抹消される予定。「早くアレをして、みんなでビールかけしたい」。プロ15年目。いよいよ美酒を味わう時がやって来る。【中野椋】

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